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2008.03.15

「柳生非情剣 SAMON」後編の2 二人の死人、真の死人

 二週連続掲載でいよいよ完結の「SAMON」。後編の2の今回は、左門と十兵衛の、柳生新陰流同士、いや兄弟同士の死闘が繰り広げられた末に、物語が終わりを迎えます。

 恥ずかしながら、作者のブログを拝見するまで、この「SAMON」では本格的な剣戟シーンがないことを全く失念していたのですが――これはそれだけ物語に不満なく引き込まれていたということだと思うのですが――今回は最初から剣戟の連続。
 左門と十兵衛という、ある意味禁断の、しかしそれだけに剣豪ファンにとっては垂涎のこの勝負を、余湖氏一流の迫力ある筆致で描ききっており、まずは満足です。

 しかし、いささか意外に感じられたのは、この決闘シーンが、ほとんど全般にわたって十兵衛視点、十兵衛サイドから描かれていたこと。
 言うまでもなく本作の主人公である左門の、最初で最後の死闘が、敵側から描かれるというのはちょっと奇妙な気もしましたが、しかし違和感を感じたか言えば、答えは否、であります。

 もちろん、剣戟に引き込まれたということもありますが、しかし最大の理由は、他者の視点を以て彼を見たときにこそ、彼の死人たる所以が最もはっきりと浮かび上がるからでしょう。
 ましてやここで左門に刃を向けるのは、数々の死地を潜り抜け、自らを死人の境地にあると自負する十兵衛。いわばこの戦いは死人と死人の決闘であるわけですが――その中で、両者の間の違いがくっきりと見えてくるのは実にエキサイティングであり、原作者の「死人」観がそこに描き出されるのには感心いたしました。
 また、剣戟の中での十兵衛の葛藤が、原作を収めた短編集「柳生非情剣」に併録された十兵衛主人公の短編「柳生の鬼」にも通じるものがあるのが、原作読者にとっては興味深いところでした。
 左門の刃に奪われた十兵衛の目から流れるものが、血だけではないように見えたのは、それはこちらの感傷かもしれませんが――


 さて、全四回にわたって描かれてきた本作、ちょっとひねくれた隆慶読者である私が言っても何かもしれませんが、原作のイメージを十二分に具現化してみせたキャラクターをはじめとする画といい、原作のエッセンスを巧みに取捨選択してみせた物語構成といい、実に満足のいく作品であったと思います。

 作者自身も希望されているようですが、是非とも、「柳生非情剣」の他の作品――特に、左門の兄弟である十兵衛、宗冬を主人公とした作品――も漫画化して欲しいと、心から願うところです。


「柳生非情剣 SAMON」(余湖裕輝&田畑由秋&隆慶一郎 「コミックバンチ」2008年第15号掲載)


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コメント

 こうして終わったのを見ると、
「SAMON」は実にいい作品であったなあと思うですよ。
友矩を軸に、柳生一族を実に上手く描いてるなあと。
特に、原作では語られなかった十兵衛の心を表現し、
あそこまで複数の物語性を持たせたラストは見事としか。
次回が実に楽しみでアリマス。

投稿: 神無月久音 | 2008.03.15 19:14

いや、十兵衛の心情はかなり違和感なく物語に入ってきたので、あれ、原作でもこんなだったけかなあ、と一瞬信じてしまいました。
原作を見事に膨らませて、同じ短編集の他の作品とも結びつけたのは見事ですね。

投稿: 三田主水 | 2008.03.17 23:41

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