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2008.04.03

「双霊刀あやかし奇譚」第1巻 人間と幽霊、人間と刀

 時は大正十年、強盗から身を守るために、偶然、家に伝わる脇差を手にした少女・早苗。だがその刀には、血に飢えた刀匠・吉光と、無愛想な神職・兵衛介の、二人の霊が取り憑いていた。脇差の力で救われた早苗だが、それをきっかけとするように、彼女の身の回りには次々と奇怪な事件が…

 女の子向け小説だって取り上げますこのブログ(ただしBLは勘弁な!)。今回は全二巻の「双霊刀あやかし奇譚」の一巻目。大正時代を舞台に、名家の少女と、二人の霊を宿した妖刀が活躍する妖怪退治ものであります。

 なんと言っても本作の最大の魅力であり、特徴は、タイトルにある「双霊刀」の存在。人格を持った刀、魂を宿した剣というアイテムが登場する作品というのは、それこそ枚挙に暇のないほどあるわけですが、しかし、二人分というのは結構なレアケース。
 しかもそれが、全くソリの合わない、対照的なキャラの二人というのが面白い。そこにお転婆で真っ直ぐなヒロインが加わるのですから、ずいぶんと賑やかな作品であります。
 この手のアイテムが登場する作品は、一種のバディもの的展開になることが多いのですが、持ち手が女の子、取り憑いているのが美青年ということで、ロマンスに流れるのもちょっと面白い。

 もちろん、本作は単に賑やかで楽しいばかりの作品ではありません。老若男女、登場人物の多くが――もちろん二人の霊も含めて――背負うのは、それぞれの人生に応じて積み重なった屈託・悩み・哀しみ等々の、人生の負の部分と言うべきもの。
 大正時代の名家に生まれ、自由な生き方を選ぶべくもない早苗。既に命を失いながらも、過去の悔恨に今なお苦しめられる兵衛介。二人をはじめとして、登場人物たちにそれぞれ背負うものがあるからこそ、それに負けず、自分の道を切り開いていこうとする彼らの姿が魅力的に映りますし、単なる妖怪を退治して万歳、というお話で終わらない味わいが、本作にはあります。

 もっとも、大正時代と言いつつ、早苗をはじめとするキャラクターの言動が、ちと現代人じみ過ぎているのが気にならないでもないですが、それを言うのは野暮というものでしょう。
 ユニークな武器をお供の妖怪退治ものという以上に、人間と幽霊、人間と刀(!?)のロマンスの行方も気になるわけで、やはり一巻を読んだら二巻目も…という気持ちになった次第です。


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