「巷説百物語」第1巻 リアルな心、妖怪というフィクション
「コミック乱増刊」にて掲載されている「巷説百物語」漫画版が、単行本第一巻としてまとまりました。
「巷説百物語」の漫画化と言えば、だいぶ以前に森野達弥氏によって行われていますが、今回は日高建男氏によるものであり、前回とはまた異なるアプローチで原作世界がビジュアライズされています。
日高建男氏と言えば、「満腹ボクサー徳川」の作者だけあって、キャラクターの描線もリアルかつ迫力のあるもの。しかしそれが原作のあの世界にはまるだろうかと、初読の際にはちょっと不安に思ったのですが、しかしこれがなかなか良い感じであります。
森野達弥氏のロックぶりに比べると、あまりに真っ当に描きすぎている感はあるのですが、しかし「リアル」な人間の心の中に妖怪という「フィクション」を吹き込むことにより一種の仕置きを行うという原作の枠組みを考えれば、リアルな絵柄というのは、むしろマッチしているのかもしれません。
さて、原作読者的に興味深いのは、本書の収録順(漫画化順)であります。
この第一巻に収録されているのは「小豆洗い」「野鉄砲」「白蔵主」「狐者異」の全四編ですが、原作正編では第一話だった「小豆洗い」、第二話だった「白蔵主」の間に、続の第一話「野鉄砲」が入り、続の第二話「狐者異」が入るという、一見ややこしい構成になっております。
しかし、実はこれは、原作の物語中の時系列通りの並び順に合わせているようなのです(雑誌の方では、この後に時系列的に「狐者異」の後に入る正編第三話の「舞首」が掲載されているので、間違いないでしょう)。
原作では、元々、正編と続は物語が互い違いに並んでおり、それで特に不都合が生じていたわけではない――逆に言えば、時系列順に変えて特段のメリットがあるわけではないようにも見える――のですが、しかし、やはり気になる試みであります。
このスタイルで、果たして原作のどのエピソードまで描かれることになるのか…その意味でも、今後が気になる作品です。
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