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2008.04.30

「マーベラス・ツインズ 3 双子の運命」 久々にハードな古龍節

 第二巻のラストで、「そして、三年の月日が流れる――。」とあって驚かされた「マーベラス・ツインズ」ですが、三年後に行く前に、この第三巻では十四年前の事件が描かれます。主人公・小魚児とそのライバル・花無缺――二人の少年の出生の秘密、凄絶な過去の事件がここで初めて明かされることとなります。

 十四年前、絶世の美青年・江楓が愛し愛された相手は、武林の禁地・移花宮の召使い花月奴。しかし、彼女の主人である移花宮の大宮主・邀月公主とその妹の小宮主・憐星公主もまた、江楓を愛したことから惨劇が起きます。身重の妻を連れて逃避行を重ねる江楓の前に立ちふさがる邪悪な罠の数々。死闘の中で花月奴は男の子を産み落とします――それも二人の男の子を。
 言うまでもなくその二人が小魚児と花無缺。そしてある企みの下に、花無缺は移花宮に連れ去られ、小魚児は父の義兄である大英雄・神剣 燕南天に救い出されますが――運命の皮肉はまだ終わりません。

 江楓を裏切った男を追い、赤子の小魚児を連れて、全国の行き場を失った悪人たちが潜むという悪人谷を訪れた燕南天。その凄まじい武功をもって、五大悪人を向こうに回して活躍する燕南天ですが、しかし五大悪人の奸計は、彼の想像を上回り、遂に…

 と、凄まじいと言うも愚かな運命の変転の下、悪人谷の五大悪人によって、悪のエリートたるべく育てられることとなった小魚児。第一巻では、十四歳の小魚児が悪人谷から旅立つシーンから始まりましたが、そこに至るまでの物語が、この第三巻ではほぼ語り尽くされています。
 時系列から言えば、物語の最初に来るべき本書の内容が、この第三巻で描かれたのは、悪党の上ゆく大悪党でありながら無邪気な少年であり、そして英雄の気質をも持つ小魚児の特異なキャラを考えれば、理解を深め、興味を煽る意味で正解だったかと思います。

 それにしても今回の過去編が実に印象的なのは、十四年前に起きた、江湖の人々に知られることのない、しかし後々江湖を揺るがすこととなる事件が、一人の男と、彼を巡る三人の女の想いから引き起こされたものであることでしょう。
 江楓と花月奴の間の想いは言うまでもなく、邀月公主や憐星公主の抱いた想いも、また愛と言うべきもの。二人の公主のその想いが破れ、その果てに二人がとった行動は、その結果を思えば邪悪としか言いようのないものですが、しかし、その根底にある――人として、女として――やむにやまれぬ想いというものは理解できるように思えます。

 古龍先生の作品は、無茶苦茶をやっているようでいて、こうした男女の姿、特に女性の心理の綾を描かせると抜群にうまいのですし、それを物語の原動力にしてみせる手腕は見事なものなのですが、まさにそれがここでも発揮された感があります。
 主人公が主人公だけに、これまでの展開はちょっと(だいぶ)コミカルな面が出ていましたが、本書の過去エピソードは、また別の意味の、ハードな古龍節を堪能させていただきました。


 さて――生まれながらに二重に入り組んだ悪意を背負わされながらも、己の道を貫こうとする小魚児。彼がその生の真実にいつ気づくことになるのか…まだまだこちらはやきもきしながら見守ることになりそうです。


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