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2008.04.14

「架空戦国記を読む」 架空戦記の持つ意味を

 時代伝奇小説とは時々混同されますし、またその区切りが曖昧な作品もあるのですが、架空戦記というジャンルがあります。
 本サイトでは、時代伝奇とは似て非なるものとして、ほぼ全くといってよいほど架空戦記というものは扱っていないのですが、今回取り上げる「架空戦国記を読む」は、その架空戦記の中でも戦国時代を舞台とした作品群のブックガイドです。

 時代伝奇と架空戦記の違いを非常に大まかに言えば、細部でフィクションを展開しながらも、大きな歴史の流れ・結果(史実)を変えないのが時代伝奇である一方で、史実そのものを改変してしまうのが架空戦記…とでも申しましょうか。
 そんな、まさしく「極めて近く、限りなく遠い世界」である架空戦記のブックガイドたる本書を今回取り上げるのは、著者が友人の榎本秋氏だったこともありますが、何よりも、これまでありそうでほとんどなかった、架空戦記というジャンルを網羅的に扱った書物という点に興味を強くそそられたからであります。

 本書は、群雄時代・信長時代・本能寺・秀吉時代・関ヶ原・大坂の陣・その他に区分(本能寺って区分ができる自体興味深いなあ)された100作品が取り上げられています。もちろんこれが本書の肝であり、列挙されたタイトルを眺めているだけで非常に面白いのですが、しかし私がそれにも劣らず感心したのは、作品そのものの解説に付された「史実」の解説であります。
 本書では、作品解説が始まる前に、戦国時代のなんたるか、年表や勢力構造などがまず語られています。さらに各作品の紹介ページでも、そのスペースの半分を割いて、関連する歴史上の人物やエピソードが語られています。すなわち、本書の半分が、実に「史実」を語っているのです。

 なるほど、いかに「架空」とついていても、全くの絵空事ではない。ある時点までは史実を踏まえつつ、そこから枝分かれしていくものである以上、作品世界の根底には、その史実がある。
 言い換えれば、「架空」の作品世界をより楽しむためには、「史実」を知っておく必要がある。…冷静に考えれば当たり前のことでありますが、しかし私にとっては実に新鮮な驚きを味わわせてくれました。

 架空戦国記という一ジャンルを網羅した労作であるだけでなく、現実を一種のパロディーとして映し出すという意味では、時代伝奇も架空戦記も同様だと教えてくれた本書。
 正直なところ、まだまだ時代伝奇を追うだけで手一杯なのですがいずれ架空戦記に手を伸ばすときには、私の傍らに本書があることは間違いないでしょう。


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コメント

この記事を読んで、速攻で注文しました。
これだけなら直ぐに届いたのでしょうけど、送料を考えて別のモノと抱き合わせで注文したので今日やっと入手出来ました。
タイトルだけざっと見たところ、読んだことがあるのは10以上20以下でしょうか。
意外に多いのかも。

著者がご友人とのことでしたので、宜しくお伝え下さい。

投稿: 冬至楼均 | 2008.04.25 21:30

冬至楼均様:
友人に代わって(勝手に)御礼申し上げます。

タイトルだけで10以上というのは、結構な数ではないでしょうか。
本文にも書いたとおり、私にとってはまだまだ未知の世界ですので、これから幾つか読んでみようと思っているところです。

投稿: 三田主水 | 2008.04.27 18:17

じっくり数えてみたら、20を越えてました。此処に乗っていないモノを加えると30近くまで行くかも。
但し今も手元に残っているのは2作品のみです。
私の場合は分野よりも作者重視なので、特定の作者のモノを集中的に読んでいました。
はまっていたのは90年代なので、最近の作者は全く判りません。

で、この中から一作だけ敢えて推薦するとしたら、
東郷隆作「架空戦記信長」(講談社文庫)を挙げます。
これは改編過程は一切書かれず、雰囲気的には史実とは異なる状況を背景とした伝奇小説として読めるかと思います。
旧版のタイトルが「信長の野望」で出版社が光栄と言うところから、狙いとするところは想像が付くでしょうが。よく、この内容で出せたモノだと思います。
同タイトルの童門版が光栄から文庫化されたのに、こちらは講談社という点から見ても、やっぱり出版側の意図とはずれていたんでしょうね。

投稿: 冬至楼均 | 2008.04.27 21:15

20以上! シリーズという意味でしょうから、うーむ、やはり結構な点数ですね。

東郷先生の場合はきっちりと考証を入れてきそうですね。実はこのガイドブックを読んだときから気になっていました。

ちなみに光栄の小説シリーズは、色々と毛色の変わった作品が多くて意外と面白いですね。

投稿: 三田主水 | 2008.04.29 01:14

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