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2008.05.09

「姫武将政宗伝 ぼんたん!!」第2巻 独眼竜誕生!

 第一巻を読んだときは、飛び道具的な印象もあった「姫武将政宗伝 ぼんたん!!」。しかしこの第二巻、独眼竜政宗誕生編とも言うべき本書において、単なるギャグマンガではない、本作独自の狙いというものが、明確になった感があります。

 時々ピンチを迎えながらもそれなりに楽しく暮らしていた梵天丸。しかし義姫が梵天丸の弟にあたる竺丸を生んだことから、母と子の間、そして家中に亀裂が走ることとなります。そしてそれは、梵天丸と、その無二の忠臣である片倉小十郎の間にまで及び…

 と、まだ幼い政宗にとっては重すぎる試練の連続の第二巻、伊達政宗の生涯を語るにあたり、避けては通れないのが、母そして弟との骨肉の争いですが、本書で描かれるのはそのプレリュードであります。まだ弟が幼いために救われている部分はありますが、しかし幼いのは梵天丸も同じ。望まぬまま、あまりに重いものをその肩に背負わされた梵天丸が、果たして何を捨て、何を選ぶのか――ギャグ漫画と思いこんでいただけに、この巻で展開されるエピソードの一つ一つに、驚かされっぱなしでした。

 そして特筆すべきは、本作に純粋な悪人が現時点では一人も存在していない――すなわち、誰も紋切り型の悪人として描かれていない――ことです。
 政宗にとって敵方、あるいは相反する立場の者はいても、それにはそれだけの理由があり、それなりの想いを背負っている。その最たるものが、後世では鬼母として描かれることの多い(と作中で自分で突っ込んでいるのはズルい)義姫でありますが、決して彼女とて政宗を憎んでいるわけではなく、むしろ「彼女」のためを思ってのことではあるのですが…
 そうした人々の想いが、一度掛け違えることによってこじれていく。その掛け違えの根底にあるのは、戦国という時代の在りようではあるのですが、そこにまで、本作は軽妙な見かけの下で、鋭く切り込んでいると言えます。

 また、この掛け違いは敵同士の間で起きるものではありません。この巻で描かれる政宗と小十郎との関係もまた、その掛け違いに翻弄されるものであります。本書のクライマックスとも言える、伊達家を退身しようとする小十郎と、その前に現れた梵天丸のシーン――そこに描かれているのは、互いに互いを想っているにもかかわわず、ささいな行き違いから互いを傷つけ、傷つく二人の姿(と書くと色恋沙汰のようですが、そういうことはないと思います。今のところ)。
 この二人が障害を乗り越え、君臣として再び立ち上がる姿には、政宗ファンであれば、いや戦国ファンであれば感動間違いなしであります。

 そして何より――その掛け違えの引き金が、「政宗が女性」というのが本作の恐ろしいところ。一見、単なるギャグや、萌えの手法に見えるこの「大秘事」が、ここまで政宗物語に全く新たな、そして説得力ある視点が与えることになるとは…
 政宗を女性としただけ(「だけ」と表現するのは気が引けますが…)で、ここまで政宗と当時の奥州の在りようが、自然な人々の感情の動きとともに見事に浮き上がってくるものかと、大いに感心いたしました。これも見事な伝奇的手法かと思います。

 …という一方で、義姫の「だまらっしゃい!」やら最上の変態忍者群やら、ギャグの部分も異常に面白いから困る。


 もしかしたら、大傑作の誕生を目の当たりにしているかもしれない…と書くと、また大袈裟に書きおってと言われそうですが、しかし実際に手にしていただければ、同意して下さる方もきっといると、私は思います。


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