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2008.05.01

「双霊刀あやかし奇譚」第2巻 異形の青春恋愛譚完結

 兵衛介と吉光、二人の霊が取り憑いた脇差により、幾度となく命を救われた早苗。いつしか早苗は兵衛介を慕うようになり、兵衛介もまた、守り刀として早苗を支えようとする。だが、兵衛介はその力を徐々に失い始め、抑えを失った吉光は血に飢えた暴走を始める…

 「双霊刀あやかし奇譚」の第二巻にして完結編であります。
 二人の霊を宿した刀というユニークなアイテムを中心に据えたこの作品、第一巻を最初に読んだときは、妖怪退治ものになるのかな、と思いましたが、豈図らんや、人間と幽霊のラブロマンスになるとは…いや、面白い。

 人間と幽霊の恋愛というのは、それこそ山のようにありますが、幽霊――兵衛介の側は刀に縛られた身。しかもその身は何故か徐々に力を失い、存在が薄れつつある状況にあります。
 ここで感心したのは、兵衛介の存在が薄れる理由が実によくできていること。この理由、兵衛介の特異なキャラ設定ならではのものであると同時に、早苗とのドラマ展開に密接につながるもので――つまりは本作という物語の根幹に絡むものであります。
 そしてそれが、さらに吉光の暴走の理由ともつながっていく辺り、うまいものだと感心いたしました。

 もっとも――一つだけ難を言えば、こうした設定を生かすには、文庫二冊というのはいかにも短かった、と感じます。せめてもう一冊、物語が描かれていれば、上記の設定とそれが生み出すドラマも、より一層印象的なものになったのではないか(特に吉光周りが)と感じた次第です。

 それは今更言っても詮無いこととして、第二巻できちんと結末を迎えた本作。終盤の展開は、個人的にはかなり厳しいものが――つまらないという意味ではもちろんなく、悲しい/つらいという意味――あったのですが、しかしそれだけに結末は、ああ、本当に良かったな…と寂しくも暖かい気持ちになれました。
 異形の青春恋愛譚として、良い作品だったと思います。


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