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2008.05.02

「オヅヌ」第4巻 巨大な物語のうねりの中で

 色々と波乱含みだった前の巻を受けての「オヅヌ」第四巻は、その波を受けてメインキャラの一人一人がさらに大きな物語のうねりに飲み込まれ、いよいよ盛り上がってきた感があります。

 キの民の秘宝を求めて琵琶湖に向かったオヅヌとゼン爺は、琵琶湖を支配する湖賊に囚われの身となり、その根城で意外な(いや本当に意外)人物と出会うことに。
 一方、二人のやり方に反発して袂を分かったコウは、偶然出くわした不比等と激しく争ううちに、互いに不思議な感情を覚えて…
 そしてその不比等の父・鎌足の恐るべき正体を知ってしまった韓国広足が妖術で逃れた先で怪人・小子部栖軽と出会い、やむなく行動を共にすることとなります。

 巨大な謎の下、敵味方がそれぞれに出会い、別れ、戦い、愛し合う様が複雑に入り組み、物語を織りなすのは伝奇ものの醍醐味ですが、この巻で味わうことができるのはまさにそれ。
 新たなるまつろわぬ民と出会うこととなったオヅヌ。自らの出自に悩む中、敵であるはずのコウに強く惹かれる不比等。文字通り虎穴から逃れたものの、さらなる暗き淵にはまった広足…
 この巻ではまだそれぞれが勝手に動き回っていますが、それがこの先、どのように交わることになるのか、これは大いに気になります。

 個人的に一番気になるのは、妖術師・韓国広足の行方で――奸佞な心と強大な妖力を持ちながらもどこか抜けていて、そこをさらに邪悪な存在(ここでは栖軽)に漬け込まれて振り回されるというのは、朝松作品における妖術師の定番でありますが、この巻での広足の姿はまさにそれ。
 これまで、設定の割に今一つ迫力というものが感じられないな…と思っていましたが、なるほど、コイツはこういう立ち位置だったのか、と朝松ファン的に大いに納得しました。
(ちなみにこのタイプのキャラは、ヘタレたようでいて最後の最後に攻守所を変えて大暴れするので、大いに期待している次第)

 それにしても、ざっと見てみただけでも、オヅヌたちキの民、湖賊、藤原鎌足、不比等、広足と栖軽と、物語の勢力分布はいよいよ混沌。ここに、皇族の複雑怪奇な人間関係がさらに絡むのですから、行き着く先は全く見えません。
 歴史的事実(伝説も含めて)にその答えの一つが見て取れますが、しかしその隙間を埋めるのが伝奇というもの。本作の一層の伝奇的展開に期待します。


 ――と思ったらしばらく休載!? そ、それはちょっと…


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コメント

三田主水さま

こんばんは。ひさしぶりにこちらにかかせていただきます。
じつはちょうどこの日、私も『オヅヌ』④巻買って読んだばかりでした。偶然ですね~。(^-^)
もちろんしっかり読んで、たっくさん楽しんだんですけど(「九大地獄の王子」ってまさかYoth…あわわわ)、その後で三田さまの記事を読ませていただいたので、面白かったポイントや次回に向けての期待を再確認できました。
自分ではやっぱり主人公がイチバン気になるんですけど、でも広足の深みにはまりようが見ていてかわいそうになってくるくらいで(三田さまがおっしゃるとおり、この姿は平賀慶たち悪の術師につうじるものがあって期待できそうですね)、ほかにも不比等の苦悩や宮廷の権謀術数などもますます興味深く進行していて。話も画も、いつも期待以上のものを見せてくれるから、だからこの作品がもっと好きになりましたv これからも、誰がどうなり、どうなってしまうのか、眼がはなせませんね。
だから、そんなますます面白くなろうかという時にしばらく休載になってしまうのは「そりゃないよ~…」ですけど……どうか早く帰ってきてくれることを祈ります…!


ところで、あのう…。
コウさんを見ていて、そのお顔に柴咲コウさんの面影が重なってしまうのは私だけでしょうか…?(←違うだろうとは想いつつも…)

投稿: ケイト | 2008.05.04 02:55

ケイトさんこんばんは。

本当に、休載というのは残念ですよね…! 折り込みのGENZOの広告に名前が載っていないのでおかしいと思ったら…

広足は平賀というかやっぱり巨勢のジジイでしょうねえ…あのヘタレぶりは。もちろん、本文にも書いたとおり後で大逆襲してくれると思うのですが。

コウが柴咲コウ! 言われてみれば面影が――じゃあゼン爺は…梶原善?(それはない)

投稿: 三田主水 | 2008.05.05 21:48

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