「エクスカリバー武芸帖 小次郎破妖録」 時代伝奇の可能性を見よ!
巌流島の決闘で宮本武蔵に敗死したはずの佐々木小次郎は生きていた。この決闘の背後に不審を抱いた二人は、結果を偽って細川忠興に探りを入れたのだった。果たして忠興の背後には、西洋妖怪たちとそれを操る大魔道士の姿があった。立ち向かう小次郎の手にあるのは伝説の長刀――その名もエクスカリバー!
ほかにどんな瑕疵があろうとも、その一点だけで許せる! 俺だけは許す! という作品があるものです。私にとって本作はその一つ。
だって「エクスカリバー武芸帖」ですよ!? 後ろにつけただけでガッと盛り上がるマジカルワード「武芸帖」が、時代劇とは縁遠そうな「エクスカリバー」と合わさったとき発生する無双の破壊力。それだけでうっとりです。
もちろん、内容だって負けていない。エクスカリバーも単なる喩えなどではなく、本物も本物。何せ、それを狙ってはるばる異国からやってくるのが、あの大魔道士○○○○なのですから…(時代もので○○○○を出したのって、本作と「皇帝戦士斑鳩」くらいじゃないかしらん)
そして時代ものファンも思わず納得なのは、エクスカリバーを用いた「つばめ返し」のロジック。
小次郎が、長刀を用いてなお空を飛ぶつばめを斬るほどの、凄まじいスピードの切り返しによる秘剣「つばめ返し」の遣い手であったことは、つとに知られていますが、本作で明かされるその真実――エクスカリバーは両刀だから手を返す必要はないんだよ!
…参りました。
と、非常に楽しい作品ではあるのですが、正直に言ってしまえば、時代ものとしては色々と不満点はあります(個人的に一番気になったのは、お姫様のキャラがそこらの女の子みたいだった点でしょうか。その辺り、悪い意味でライトノベル的であります)。
しかし、冒頭に述べたとおり、ちょっとやそっとの瑕疵があろうとも、本作の持つ魅力が揺らぐものではありません。
時代伝奇というジャンルの持つ狂気可能性を、本作で存分に味わっていただきたいものです。
ちなみに――作者のサイトを拝見すると、実に素晴らしい続編のアイディアが…
確かに○○○○が登場するのであれば大いにアリですが、それだけにお蔵入りとはなんと勿体ない! 出せるものなら血の涙を出したいくらい悔しいです、これは。
「エクスカリバー武芸帖 小次郎破妖録」(葛西伸哉 電撃文庫) Amazon
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