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2008.05.27

今週の「Y十M 柳生忍法帖」 剣鬼遂に散る

 ラストまで本当にあとわずか! というところで一週おあずけとなってしまった「Y十M 柳生忍法帖」、前回ラストは、知っている人はよく知っているけど、知らない人は全く知らない木村助九郎をはじめとする剣士たちが登場したところまででした。今回の冒頭で明かされるその正体は――

 彼らの正体こそは柳生新陰流の長老・高弟十人、その名も柳生十人衆柳門十哲。松尾芭蕉の高弟たち「蕉門十哲」のもじりだと思うのですが、実に素晴らしいネーミングです。漫画の中では明かされませんでしたが、その他のメンバーも出淵平兵衛、庄田喜左衛門、村田与三、狭川新左衛門と、柳生ものの小説などではお馴染みの面子。ほとんど柳生新陰流オールスターと言うべき顔ぶれで、実に頼もしい援軍ではあるのですが、まだ大物が――柳生但馬守宗矩、言わずとしれた柳生十兵衛の父であります。

 が、父親の顔を見た十兵衛、先週までの格好良さはどこへやらのガクガクとした、緊張したとも凍り付いたとも見える表情に…オーラスに主人公がこんな顔をしているのは大問題ですが、幸い事態は凄まじい勢いで展開中。宗矩に続いて現れたのは、江戸にいたお千絵とお笛が、クライマックスにギリギリ間に合って只今到着です。
 しかし再会を喜ぶ間もなく、磔台から解き放たれた五人とともに向かう先は、蛇の目は一つ、漆戸虹七郎。十兵衛のないものを――既に潰れていた側の眼を――奪ったのと引き替えに、あるものを――残された隻腕を――失った彼に既に戦闘能力はなく、七つの刃に貫かれ、さしもの剣鬼もついに地に伏します。
 と、ここで注目すべきは、虹七郎が七つの刃に貫かれるまで、その口から桜の枝を離さなかったこと。前回の感想で触れたように、原作では敗北を悟った後自ら枝を落として、卑怯にも鉄砲隊で十兵衛たちを撃ち殺そうとしたのですが、こちらではそのような挙に出ることなく――最後の最後に惨痛に耐えかねてか食いしばった歯が枝を噛み折るまで、自らの剣士たる証としての枝を離すことはありませんでした。
 前回の感想のコメントに、この「Y十M」では、虹七郎は卑怯な手は使わない、ある意味あくまでも純粋な剣士として描かれているのではないか、というご指摘をいただきましたが、これはまさに慧眼であったと申せましょう。どうにもやられ役としての存在感が先に立った感のある会津七本槍でしたが、最後の最後で男を見せてくれました。

 さて、残るは諸悪の根元、バカ殿加藤明成の仕置きのみ。ここまで来ても見苦しく明成は己の堀一族への仕置きが、幕法に則ったものであると強弁しますが、しかしここに満を持して登場した天樹院千姫様が切ったカードは、意外、そちらではなく、物語の冒頭に描かれた、会津七本槍による鎌倉東慶寺蹂躙の罪でありました。
 これは確かに意表を突いた切り札――というのもこの罪、咎めようと思えばいつでも咎めることができたはずであって、要するに最初にこれをやっておけば、ほりにょの艱難辛苦の日々もなかったはずなのですが…もちろんそれを言うのは野暮というもの(というより、物語の冒頭で千姫自らがこの手段の存在を匂わせているのですが)。
 自らが想像だにしなかった――それこそが、この男の外道たる所以の一つでありますが――罪で裁かれるというのは、まさに溜飲が下がるというかなんというか。しかも、己の息子からも絶縁同様に扱われ、領国を失って一人、石見国(今の島根)に流されると…明成の息子は、原作では登場しませんでしたが、史実に対しては真面目なせがわ先生、ここで明成への追い打ちとして(名前のみとはいえ)再登場させるというのが面白い(しかし、千姫の言う「地獄」の意味が原作とちょっと変わっているのも興味深いですな)。
 何はともあれ千姫のドSっぷりに惚れ惚れしました(しかし「ごみょうだい」だよねえ…?)。

 さて、今回のサブタイトルは、「尼寺五十万石」――尼寺と争った挙げ句に敗れて四十万石をふいにした明成にとってはまことに皮肉なタイトルですが、実はこれ、原作「柳生忍法帖」の旧題。ここでこれを持ってくるとは、何とも心憎い仕掛けではありませんか。

 さて、次回でついに最終回ですが、そのサブタイトルは、やはりあれ以外ないでしょう――感動の大団円まで、一週間をずいぶん長く感じることになりそうです。

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