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2008.05.03

「吉宗の偽書 兵庫と伊織の捕物帖」 伝奇と奉行所もののハイブリッド

 目付・天童兵庫は、将軍吉宗より、紀州家の当主の相次ぐ死が吉宗の陰謀である旨記された偽書を書いたという医師を探すよう命じられる。一方、兵庫の剣の同門である南町定町廻同心・本山伊織は、ある両替商にまつわる辻斬事件を追っていた。兵庫と伊織、二人の追う事件は、意外な点で繋がりを見せて…

 あまり表面上のジャンルに拘ってばかりいると、面白い作品を見逃すことがあるなあと反省することがあります。この「吉宗の偽書 兵庫と伊織の捕物帖」も、そう感じた一冊。副題では捕物帖と謳いつつも、その実、伝奇性の強いユニークな作品であります。

 本来であれば将軍はおろか藩主すら遠くにあった吉宗がその地位に就くにあたって、何らかの陰謀があったのではないか、というのは、吉宗ものでは定番のネタではありますが、本作ではそれにまつわる偽書を中心に据え、物語が展開していきます。

 果たしてその偽書を記したという医師はどこへ消えたのか、そして何のために偽書は作られたのか? この謎と、本来であれば全く関係のない旗本のバカ息子の辻斬が思わぬところで絡み合い、事件がどんどんとややこしくなっていくのが、本作の実に面白いところ。
 物語中盤で、意外な偽書の目的と黒幕が明かされるのですが、しかしそれでも二つの事件は終わらず、終盤にはどんでん返しの連続も用意されていて、最後まで興味を失わずに読むことができました。
 伝奇ものと奉行所ものという、相性があまり良くないように見えるジャンルをうまく結びつけて見せたのには感心いたします。

 あえて難点を挙げるとすれば、相当に人物関係と物語設定が入り組んでおり、その辺りの展開がちょっとぎこちない部分が個人的には気になるのですが、デビュー三作目ということで、これは大目に見るべきところでしょうか。

 もう一つ、本作で重要な人物の正体が最後まではっきりとは明かされないのが気になるところですが、これは今後のシリーズ展開によると考えるべきなのでしょう(もしかして「神の血脈」?)。
 うまいこと作者の仕掛けにやられたようですが、シリーズ二作目も読んでみなくてはと思わされまたのは事実であります。


「吉宗の偽書 兵庫と伊織の捕物帖」(伊藤致雄 ハルキ文庫) Amazon

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