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2008.05.17

「袈裟斬り怪四郎」 面白くてナンボの大活劇

 江戸を騒がす辻斬強盗の一団・髑髏党。その首領と目されたのは、袈裟斬りの一刀を得意とする怪浪人・怒怪四郎だった。自分にぞっこん惚れ込んだ博打打ち・お蓮の元に転がり込んだ怪四郎は、怪盗葵小僧の遺した三千両の秘密が隠された二つの印籠を巡り、悪人だらけの岩間道場に大喧嘩を挑む。

 世の中には面白さが最大の価値、面白くてナンボ、という世界があります。本作もその世界の作品、貸本小説の一編であります。

 主人公は酒と人斬りをこよなく愛する物騒極まりない無宿浪人・怒怪四郎(いかりかいしろう)。何となくどこかで聞いたような響きの名前ですが、本名らしいので仕方ない(?)。
 この怪四郎が、とにかく強敵相手に存分に愛刀を振るえる、ということで首を突っ込んだのが、怪人髑髏党との対決と、二つの印籠の争奪戦。そこにいなせな盗賊やおっちょこちょいの岡っ引き、男装の美剣士や鬼面の怪人も絡んでのドタバタ騒動は、まさに大衆時代小説の王道で、深みや趣を求める向きには全くオススメできませんが、チャンバラ活劇大好きな私のような人間には実に楽しい作品でした。

 しかし(個人的に)弱ってしまうのは、とにかく面白さ第一のために、こちらとしても面白い! としか言いようがなくなってしまうことで…
 強いて言うならば、怪四郎のアンチヒーロー(怪四郎のようなキャラクターは、虚無型と呼ばれることが多いのですが、こいつはむしろアンチヒーローと呼ぶべきではないかと思います)ぶりが、今読んでみるとむしろ新鮮に見える、ということでしょうか。
 とにかく俺の楽しいこと第一主義の男が、暴風のように荒れ狂っているうちに事件をいつの間にか解決してしまう…というのも、何が正義かわかりにくい昨今、むしろスッキリして、時には良いように思えます。

 それにしても、本来であれば消え去る運命にあった貸本小説を――たとえ作者が若き日の太田蘭三先生であったとしても――こうして文庫の形で刊行されたというのは、快挙というほかありません。怪四郎シリーズはこの後も着々と文庫化されていますので、これからもとにかく面白がらせていただこうと思います。


「袈裟斬り怪四郎」(太田蘭三 祥伝社文庫) Amazon

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