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2008.06.03

今週の「Y十M 柳生忍法帖」最終回 雲とへだつ

 記念すべき第百回をもって、「Y十M 柳生忍法帖」もめでたく大団円。そのサブタイトルはやはり「雲とへだつ」。別れの時にふさわしい、切なくも爽やかなものを感じさせるタイトルです。

 「雲とへだつ」とは、松尾芭蕉の「雲とへだつ友かや雁の生き別れ」の句から取られたもの。芭蕉が故郷の伊賀上野を捨て、江戸に出る際に詠んだ句であり、友との別れの想いが込められた句であります。
 その句を冠した最終回は、十兵衛の新たな旅立ちと、堀の女たちとの別れが描かれることとなります。
 堀の女たちの復讐物語は前回で完結し、今回はエピローグといった内容。相変わらず親父殿の前では青菜に塩といった体の十兵衛ですが、それを知ってか知らずしてか、沢庵和尚は、十兵衛を庇っているのか煽っているのかわからない調子で宗矩とあれやこれやと語り出します。
 これはこの場面に限らないのですが、このラストエピソードは、原作ではいかにも大団円といった、ちょっとしみじみした調子だったのですが、この「Y十M」では、どこかユーモラスな印象を湛えたものとなっていますが、これはこれでホッとできるものがあって良いかもしれません。
 …にしても和尚をただただ心配して会津に駆けつけた宗矩さんマジいいひと。

 と、そんなやりとりから逃げ出して(芦名衆から追い剥ぎまで働いて!)一人馬上の人となった十兵衛をですが、その彼を追う者たちが、八騎――言うまでもなく、お千絵・さくら・お鳥・お品・お圭・お沙和・お笛、そしておとねであります。
 それぞれ万感の想いを込めて視線を交わす十兵衛と女たち、十兵衛は北へ、北へ――そして女たちは鎌倉東慶寺へ。おそらくは二度と会うことのない両者ではありますが、そこには涙はなく、むしろお互いを思いやり、誇らしく思う気持ちが見て取れるのが、何とも清々しいことです。

 そしてそんな印象をさらに強めるのが、ここでまさかのオリジナル展開、意外なキャラクターの登場であります。あの、十兵衛の鶴ヶ城突入時にお供して、そこで斬られたと思われた鶯の七郎が…! 隻眼になっちゃいましたが元気な姿を見ることができてこれは嬉しいサプライズでした。

 そして雲とへだつ十兵衛と女たち。しかし十兵衛のにはもう一人、どうしても胸の中から去らない女人の姿がありました。言うまでもなくそれは――
 この場面、定番中の定番パターンである、青空に笑顔が浮かぶというオチではなかろうな、と少し身構えていたのですが、ごめんなさい、私があさはかでした。
 青空に浮かんだのは確かですが、その姿は…これは是非実際にご覧いただきたいのですが、この手があったか! と大いに唸らされた素晴らしい画。気高さすら感じさせられるその姿は、本作のラストを飾るにふさわしいものであったかと思います。


 さて、長きに渡りました「Y十M 柳生忍法帖」の感想も今回でおしまい。
 以前から何度も書いていましたが、原作の「柳生忍法帖」は、私の最も好きな時代小説の一つ。それがせがわ先生の手で漫画化されると知ったときの嬉しさを、昨日のことのように思い出します。

 冷静に振り返ってみると、正直なところ「あれ?」と思う場面も時々ありましたが(まあその大半は原作由来なのですが)、しかしそれを補って余りある、せがわ先生の見事なビジュアルとアクションをたっぷりと堪能することができて、本当に原作ファン、せがわファン冥利に尽きる作品でありました。
 あの、十兵衛の素晴らしい啖呵を見ることができただけでも、私は本当に、本当に満足です。


 さて、どうやら十兵衛のこの後の物語もせがわ先生により漫画化されるようですが――今度は十兵衛に狗神が取り憑くんですね!?
 …ってそっちかい! と一人ツッコミして、この感想を終えさせていただきます。

 せがわ先生、本当にお疲れさまでした。

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コメント

 あのラストはよかったなー、と。
何はともあれ、見事な大団円であり、満足至極。
せがわ先生、ありがとうございました、としか。

 ところであのラストの一文といえば、

 「そういえばあれからもう10年か…」

 とかゆって唐突に回想モードへゴー。
柳生屋敷に二人連れがやってきて、
「卒爾ながら但州刺史殿に御意得たい」とか言い出すフラグだと
当方は睨む所存。
うわぁい。

投稿: 神無月久音 | 2008.06.03 01:21

いや、本当にいいラストでしたね。まさかこう来るとは…と最後まで唸らされました。

って、その展開は勘弁(笑)

投稿: 三田主水 | 2008.06.03 23:59

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