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2008.06.29

コクーン歌舞伎「夏祭浪花鑑」に行ってきました

 ご趣味はと聞かれれば、時代劇…ではなく古典芸能観賞と答えてしまう私ですが、恥ずかしながら、渋谷はシアターコクーンのコクーン歌舞伎を観たのは昨日が初めて。
 演目は「夏祭浪花鑑」、題名通り夏の祭に湧く大坂を舞台とした作品で、大坂の町人の心意気と、それが招いた思わぬ悲劇の姿が描かれる名作なのですが…なかなかユニークなアレンジがなされ、面白い舞台となっていました。

 男伊達で鳴らす団七が、主筋の放蕩息子・磯之丞とその恋人・琴浦を匿ったことから様々な事件に巻き込まれ、遂には弾みから小悪党の舅・義平次を夏祭りの喧騒の中で殺害してしまうというのがあらすじ。

 私は以前、文楽でこの演目を観ているのですが、一番の見せ場、名場面として知られる義平次殺しの段は、効果音以外は無音の中で二人がつかみ合い、団七が舅を殺した瞬間、バックに夏祭りの喧騒とともに神輿が飛び出してくるという演出。
 しかしこちらでは、暗闇の中、照明は蝋燭とスポットライトのみでひたすら生々しく二人が取っ組み合い――義平次の方は舞台上に実際に(!)作られた泥沼の中に落ちて泥田坊のようにまでなって――文字通りの泥臭いまでのぶつかり合いが殺人で終わった次の瞬間! 舞台上が一瞬に明るくなり、奥から一斉に祭の衆がどっと駆けてくるという演出。文楽での静と動のコントラストも見事でしたが、こちらでの、喧騒のなかに登場人物の感情がふっと溶けていくような感触も、なかなか味わい深いものがあります。

 話が前後しますが、今回の演目は夏祭りが背景ということで、舞台上だけでなく、通路やロビーを含めた会場全体がお祭りムードで統一され、時にはそれらの空間まで使用しての演出が実にダイナミックな面白さでした。
 特にラストの、殺人が露見して逃れる団七と捕り手(一斉に舞台上に出現するシーンに吃驚)の派手な大立ち回りは、舞台本来の楽しさに溢れていたと思います。その後に待ち受ける、ある意味メタなオチは、賛否あるかとは思いますが…

 もちろん派手なばかりではなく、登場人物の濃やかな心の動きの描写・演技にも見るべき点は多く、個人的に強く印象に残ったのは、団七の親友の妻・お辰を演じた中村七之助の演技。
 磯之丞を匿おうと申し出るも、お前は色気がありすぎるので間違いがあってはいけないと断られ、それでも女の一分を通すため、己の顔の半面を焼いてみせる場面は、女としての意地・覚悟・悲しみ・ためらいと、様々な感情の渦が、表情と所作から伝わってきて感心させられました。個人的には、歌舞伎によくある女性が割を食うこの手の展開は嫌いなのですが、そういった好き嫌いを超えて感心させられたのですから大したものです。


 色々と大胆な演出もあり、真面目な歌舞伎ファンの方はどう思うかはわかりませんが、私個人としては大満足の舞台でした。また追いかけなくてはいけない対象が増えたかな。

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