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2008.06.16

「さらば、一刀流」 還ってきた幽剣抄

 「幽剣抄」久々の新作「さらば、一刀流」をようやく読むことができました。
 本作は昨年十月に発売された「さいはての家 その他の物語」に書き下ろしで収録されたものですが、シリーズの連載が終了したのが2003年ですから、約四年ぶりの復活ということとなります。

 さる藩で水明一刀流を営む黄楊草之介の前にある日現れたのは、水明流とは源流を同じくする鏡源一刀流の面々。土地に根付き、静かに一流を広める水明流と対照的に、貪欲に他流を併呑し、己の勢力を伸長せんとする鏡源流が、草之介に「助力」を求めてきたのでありました。
 もちろんこれを断った草之介ですが、次に彼の前に現れたのは鏡源流師範・境源木斎の娘。実はかつて彼女と将来を誓いあった仲であった草之介は、彼女の誘いをも断るのですが…
 そしてそして鏡源流と町道場の対抗戦が開かれることとなった時、源木斎の提案と、それに対する草之介の答えは――

 という内容の本作ですが、一読してまず抱いた感情は、驚きでした。まさか、このような結末となるとは…という。
 およそこのような物語であればこうなるであろうというこちらの予想を覆し、そして、まさしく一刀を以てすっぱりと断ち切ったような結末は、初め大いに意外に感じましたが…しかし、次に、これで良いのかもしれないと感じるようになりました。

 その結末について詳細に述べることはマナー違反に当たりますし、それ故感想も詳細に述べることができないのがもどかしいのですが、これも剣の道――己の道に生きた、生きてきた人間の有り様、一つの結末と、哀しみとある種の共感をもって受け止めた次第です。。


 「幽剣抄」は、人の世の有り様を、剣と怪異で以て描いてきた連作シリーズですが、本作で描かれる怪異は、他の作品に比べれば、まことに細やかなものであるかもしれません(シリーズ読者であれば、すぐに予想がつくでしょう)。
 しかし本作で描かれた人の世の有り様は、その怪異すら瞠目するしかないほどの壮絶なもの。本作もまた、見事に「幽剣抄」の一編であります。


 「さらば、一刀流」とは、誰が、誰に対して投げかけた言葉なのか――重く胸に残ります。


「さらば、一刀流」(菊地秀行 光文社「さいはての家 その他の物語」所収) Amazon

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