「無宿千両男」 いま楽しければOK!?
江戸を騒がす怪盗むささび小僧に、阿部家の御金蔵が破られた。その責めで理不尽にも留守居役・海保左内から切腹を命じられた青年武士・多門一平は、汚名を晴らすため、主家を飛び出す。その一平の前に現れたのは、人斬り浪人・怒怪四郎。一平の腕が立つと見て、執拗に立ち会いを望む怪四郎だが…
祥伝社文庫で刊行が続いている太田蘭三先生の貸本時代の時代小説「怒怪四郎」シリーズの第三弾が、この「無宿千両男」であります。
今回怪四郎が挑むのは、江戸の闇に跳梁するむささび小僧の謎。千両箱を次々と盗み出す怪盗に、千両役者・怪四郎が挑むという趣向ですが、もちろん一筋縄でいくはずがありません。
なにせ怪四郎といえば、酒と人斬り、それも強い奴を叩っ斬るのが何よりも好きという剣呑にもほどがある男。いかにも正統派の(?)時代劇ヒーロー然とした本作のもう一人の主人公・一平が腕が立つと見るや、とにかく斬らせろ斬り合わせろと、物語の進行そっちのけで騒ぎだすのが困りもの…というか本作の楽しいところであります。
もちろん、正しい時代活劇エンターテイメントたる本作ですから、最後には手を取り合って悪に立ち向かうことになるのですが…
(怪四郎のちょっとイイところも見れますしね)
何はともあれ、ストーリーはお約束的ながら、アンチヒーローとしての怪四郎の存在感がいいアクセントとなって実に楽しい作品となっている本作。怪四郎の生き方同様、とにかくいま楽しければOKという作品ではありますが、その姿勢はエンターテイメントとしてはもちろん正しいもの、帯の謳い文句にあるとおり、「これぞ正統派」であります。
本作は、作者にとってもシリーズの中で格別の愛着を持っている作品とのことですが、それもわかるような気がする、楽しい作品です。
ちなみに、今回の表紙も、イラスト・タイトルの配置ともども実にスマートで洒落たもの。こういうのをいい仕事というのでしょう。
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