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2008.07.15

「マーベラス・ツインズ契 1 だましあい」 運命に抗する第一歩

 いつの間にか公式サイトまでできていてびっくりの「マーベラス・ツインズ」、今度は漫画化ということで、その商品展開には少々驚かされますが、原作翻訳の方は第四巻目からお色直しということか、「マーベラス・ツインズ契」というタイトルでリスタートです。

 物語は第二巻のラストから直接続く展開。宿命のライバル・花無缺との対決から、ヒロイン・鉄心蘭(それもフルヌードの)に庇われて這這の体で逃げ出す小魚児。…武侠小説の主人公として考えうるかぎり最低の行動、アンチヒーローなどという格好イイものでは到底ない有様ですが――
 さすがに楽天的かつ自信過剰の小魚児であってもこれは堪えたか、以後三年間の放浪生活から新章はスタートします。

 それまでがそれまでだけに、凹んでしまった小魚児は何とも侘しく見えますが…しかし伸びる前にはまず縮むことが必要。
 それまで口八丁手八丁で向かうところ敵なしだった少年が文字通り泥に塗れて、一見世間の全てから逃げ出してしまったように見えても、しかしそれでもその胸の中に消せない炎を持って雌伏する。この辺りの静かな熱さは、その作品の中で、様々なスタイルで「男」の姿を描いてきた古龍ならではだと感じます。

 そして小魚児のひねくれぶりが、前巻で描かれたように、彼がこの世に生まれ落ちた時から悪意でその生が歪められてきたことの一つの結果であることを考えれば、今回の挫折と復活は、その運命に打ち勝つ第一歩と言えます。
 そしてもう一人、花無缺もまた、その歪められた運命から一歩踏み出そうとしています。生まれて以来、誰一人として愛することを許されなかった愛を知ろうとする彼の姿は、それまでの鉄面皮ぶりもあいまって、より強く印象に残ります(その愛の対象がまた、一波乱必至ではあるのですが…)

 さてストーリーの方では、三年前から、いやそれ以前から江湖で暗躍を続けてきた大悪人・江別鶴が、いよいよ小魚児の敵として――正確には小魚児を江別鶴を敵として――その前に現れることとなります。
 善人に見えた者が、実は真の悪の黒幕、というのは古龍作品では毎度のパターンですが、本作ではそれが早い段階で明かされており、読んでいるこちらとしては、その胸の悪くなるような陰謀と偽善者ぶりに、大いにヒートさせられます。
 そんな江湖の名望家を敵に回すということは、すなわち江湖そのものを敵に回すということ。しかし復活した小魚児にしてみれば、それぐらいが丁度いい。敗北を知り、成長した彼が、大きすぎる敵を相手にしての暴れっぷりを楽しみにしたいと思います。


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