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2008.07.17

「×天」第2巻 自由なる生き様、清十郎の道

 吉原の女装の付け馬・椿清十郎の活躍を描いた異色の時代漫画「×天」の第二巻…にして最終巻であります。なかなかユニークな作品だっただけに残念ですが、ここで歎いても始まらない、前向きに楽しむこととしましょう。

 この巻の前半で描かれるのは、物語冒頭から清十郎に振り回されている不器用な浪人・伊勢崎氏の仕官話。不始末で三十両の借金をこしらえ、そのカタに娘を吉原の禿にすることとなった伊勢崎が、旧友の薦めで試験を受けることとなった家はとんでもないしきたりがあって…
 と、久々に登場のおっさん女装ネタなどで笑わせておいて、しかしその後に待ち受けているのは仕官を賭けた真剣勝負。ここで窮地に立った伊勢崎が思い出すのは融通無碍な清十郎の姿勢…というのが、清十郎の存在感というものを感じさせてなかなか良い感じの展開となっております。

 が、ようやく仕官したこの屋敷の主は、幕府の要職にありながらも、武士を無くすと豪語する怪人物。そしてなによりも、清十郎の父であって――というところで、意外なところからラストエピソードになだれこんでいくこととなります。

 完結してみて正直なことを言えば、時折顔を出す社会制度がどう時代がどうというマクロなメッセージ的な部分は、まだまだ生硬さが抜けず、特に対象年齢層を考えれば、まだまだ…と言ったところ。むしろ今回ほぼ唯一の単発エピソードである、自殺願望を持つ花魁と幇間のエピソードのように、時事ネタ的人情話に光るものがあったやに思います(ちなみにこのエピソードのオチ、江戸時代にソレがあるかい、というツッコミを除けば、なかなか皮肉が効いて気に入っています)

 しかしその一方で、清十郎と彼の周囲の人物の関わりを描きつつ、人間としての自由な――自分らしさを貫くという意味での――生き様とは何か、という部分については、清十郎自身のドラマを踏まえつつ、健闘していたかと思います。
 特にラスト二話、清十郎の過去――はじめての女装――と、清十郎のこれからを描いたエピソードは、ちょっと急ではありましたが、しかしきっちりと描くべきを描き、ちょっと風変わりな「対決」で、清十郎の道を再確認させるラストも後味が良かったかと思います。
 また、ここで再登場した山田浅右衛門に、過去話のあるキャラとの因縁を設けることで、物語のテーマ的部分と、浅右衛門のキャラ立てを同時に行っているのは、うまいものだと感心しました。

 時代もの、それも特殊な舞台ということで色々と大変な部分もあったのではないかと思いますが、しかし物語的にはまずは大団円。色々書きましたが、最後まで楽しく読ませていただいたのは間違いないお話です。


 ただ、「対決」の決着シーンでの清十郎の顔は、正直ないと思います。怖い、怖いよ!


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