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2008.07.10

「泣く侍」第3巻 今回は泣かず?

 最近どうにも元気がなくて心配になる「コミック乱ツインズ」誌ですが、その誌上からこのところお休みしているのが本作「泣く侍」。しばらく淋しい思いをしていたのですが、ようやく単行本の新刊がでました。

 前巻で旅芸人一座に命を助けられた主人公・総次郎ですが、この一座の座長・蟻助も何やら訳あり。老人ながら凄まじい腕前を持つ蟻助と総次郎により手下の多くを失い、追い詰められた幕府隠密・梟の次なる手は、蟻助により育てられた人間凶器・風雷兄弟…ということでこの巻では、風雷兄弟との対決と、蟻助の過去の罪とが描かれることになります。
 そしてとにかく印象に残るのはこの風雷兄弟のキャラクター。作者の中山昌亮氏は、厭な――一目見ただけで目を逸らしたくなるような――目をした人物を描かせたら、山口貴由と並ぶと個人的に思っていますが、この風雷兄弟の目はまさにそれ。一目で壊れた人間とわかるビジュアルには、怖気を奮わずにはいれません(特に兄の方は、蟻助の飛礫によって喉に穴を空けられたため、喋るときには指をそこに突っ込んで蓋にするという実に厭なキャラ立て)。

 もちろん(?)ビジュアルに負けず凶悪無惨な行動を見せる兄弟ですが、しかし二人をこうしてしまったのは蟻助。二人との対決は、同時に蟻助の過去との対決でもあります。
 今は身寄りのない子供たちに軽業を教える蟻助ですが、かつて彼が子供たちに教えていたのは殺人術。その事実を知った今の蟻助の子供たちの不信と善意が、思わぬ大混戦を招くのが、この巻のクライマックスと言えるでしょう。

 ――と、こう書くと何となくわかるように、この巻の中心はほとんど蟻助サイド。総次郎の側にも、彼の江戸行きの目的であった江戸家老との対面というドラマは用意されているのですが、やはりドラマの中心から一歩引いている感があります(この巻では一度も泣いていないですしね)。
 何よりも、伊藤清之進様の出番が、肝腎のクライマックスでもほとんどなかったのが何とも残念でした。

 物語的にはいよいよクライマックスに向かっているかと思いますが、過去の清算を決意した蟻助に負けず、総次郎と清之進のドラマも、どんどんと盛り上げていただきたいものです。


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