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2008.07.31

「復讐する化石 猫子爵冒険譚」 ベルリン大怪獣活劇伝奇

 五月のうららかな日に発見された他殺体に付着していた遺留品…それは数億年前に絶滅したはずの古代魚の鱗だった。それを看破した変人学者ノプシャ男爵と、彼と偶然知り合ったウルリーケは、連続する「獣」による殺人事件の捜査に乗り出す。が、魔術結社・新聖堂騎士団もまた、「獣」を追っていた。ウルリーケの危機に、再び猫子爵・鷹宮洋一郎が立ち上がる。

 猫子爵冒険譚の第二弾は、オカルト・アクションであった前作とは大いに趣を変えて、何とモンスター・ホラー…というより怪獣小説とも言うべき内容の大活劇。
 1926年のベルリンで発見された遺体に付着していたのは、数億年前に絶滅したはずの古代魚の鱗だった…という、実に胸躍る導入部に始まり、次々と古代の怪物たちの影がベルリンの闇を脅かす様は、好きな人間には堪らない展開。怪獣ものには不可欠というべき、正規部隊――軍隊とか警察とか――との激突もしっかりと描かれ、可哀相な人々を蹂躙する規格外の怪物の脅威を、しっかりと見せつけてくれます。
 そして、先の大戦での軍部の狂気の実験と密接に絡んだその悍ましくも哀しい正体と行動原理もあいまって、物凄く独創的というわけではありませんが、実に印象的な存在として描かれていると言えます。

 そして怪獣ものには、その正体を探り対策を立てる碩学の存在が不可欠ですが、それがまた実に本シリーズらしい怪人…いや快人。
 トランシルヴァニア貴族で地質学・考古学・民族学・古生物学に通じ、大のオートバイや自動車好き。第一次大戦では情報将校としてスパイ戦に活躍したという、伝奇冒険活劇のキャラのような人物ですが、これが何と実在の人物とのこと。それだけでも十分にユニークですが、本作ではそのパーソナリティを、実にエキセントリックではた迷惑、しかしどこか茶目っ気があって憎めない、そんなおっさんとして造形しており、血生臭い場面の少なくない本作の清涼剤ともなっています。

 もっとも、実在の人物にあまりに目立つと、架空の主人公たちの存在感が薄れるというのは、時代伝奇ものでしばしば発生する悲しむべき事態ですが、本シリーズの主人公たる猫子爵どのは、元々俺が俺がという自己主張はしないくせにおいしいところはきっちりとさらっていくタイプ(やっぱり猫だ…)。
 本作でも、奇怪な能力を持つにせよ、魔術による生成物ではない――すなわり物理的力でしか滅ぼせない――「獣」を向こうに回し、ヒロインを守っての大活躍。ことに、クライマックスのベルリンの夜を輝きに染めての大追撃戦には興奮させていただきました。

 まあ、その半面、宿敵たる新聖堂騎士団がどうにも目立たないという部分はあり、また、「獣」側のドラマがもう少し突っ込んで描かれていれば、その正体にまつわる悲劇と、ラストのささやかで意外なしかし暖かい奇跡の味わいももう少し高まったかな、と思わないでもありません。
 もちろんこれは後出しジャンケンのようなもので、まずは十分に、いや十分以上に大怪獣活劇伝奇を楽しませていただき、満足であります。


 が、本作以降、シリーズの続巻が出ていないのはなんとも無念…


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