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2008.07.12

「ななし奇聞」 妖かしたちはマイペースに

 妖怪漫画も色々とありますが、本作はその中でもなかなかユニークな作品の一つ。明治時代の初期を舞台に、放浪の旅絵師・七篠晩鳥(ななしのばんどり)が、あちらこちらで妖かしと出会う様を描いた連作短編集であります。

 七篠先生は、妖かしを見る力を持ってはいますが、別にこれを恐れたり、退治したりしようというわけでもなく(たまに依頼に応じて対決したりもするようですが)、それも天然自然の一部であるかのように、ごく普通に、むしろ洒脱ですらある態度で接する人物。「ななしの」という名が象徴しているように、氏素性も来歴も不明ではありますが、そんなことが気にならなくなるくらい、そのあやかしに対するスタンスは魅力的で、妖怪馬鹿的には「いいなあ…」と思わず思ってしまうほどです。

 収録された作品は、「ななし奇聞」「飛び首」「つくも」「ひとつ」「待ちびと」「くだの」「くだの弐」「泣き虫されこうべ」「あやかし散歩」の全九編。ストーリーものあり、掌編あり、四コマあり、妖怪エッセイあり…七篠先生が出会う妖かし同様、収録作品もバラエティに富んだ内容で、独特の絵柄も相まって、万華鏡を覗き込んでいるかのような楽しさがありました。
(ほも要素も微妙にありますが、なに、男同士のキスシーンがちょっとあるくらいなのでこれくらいは我慢…しづらい)

 冒頭で触れたとおり、舞台となっているのは明治初期。時代の大きなうねりの中で、急激に人々の生活も欧化していき、良くも悪くも古きものたちが姿を消していった時代であります。本書の冒頭に収められた表題作「ななし奇聞」において、七篠先生が皮肉な口調で語るように、
妖かしにとっても住みにくい時代となったことは想像に難くありません。
 しかし、七篠先生の気ままな旅と、その道行きに現れる妖かしたちを見ていると、案外どこまでもマイペースに、妖かしたちはそこら辺で生き残っているのではないかなあと、楽しい気分で考えることができた次第です。

 ちなみに作者の永尾まる氏は、猫漫画専門誌で「猫絵十兵衛御伽草紙」という時代漫画を連載されているようですが、こちらも単行本化されないかと期待しているところです。


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