« 「諸刃の博徒 麒麟」第4巻・第5巻 時代を対手の大勝負 | トップページ | 「大江戸ロケット」(漫画版)第2巻 リフトオフはまだ遠い? »

2008.07.29

「黒指のカイナ」第一回 少年は嵐の中へ

 「KENZAN!」誌は、毎回他誌ではなかなか読めないようなユニークな時代小説を掲載してくれますが、最新の第六号から掲載の始まった神野オキナの「黒指のカイナ」もそんな作品の一つでしょう。
 第一話を読んだ限りでは、薩摩の脅威に晒された江戸時代初期の琉球を舞台とした、一種の青春ものといった趣の作品であります。

 主人公の少年・カイナは、那覇近くの波之上の租界で暮らす少年。本土から流れてきた元忍びの両親に育てられたカイナは、その身に体術・戦闘術を仕込まれながらも、それを振るうこともなく平和に暮らしてきたのですが――薩摩の侵攻が、彼の運命を大きく変えることとなります。

 私は恥ずかしながら作者の作品はほとんど読んだことがないのですが、聞けば沖縄出身の沖縄在住で、故郷に並々ならぬ思い入れがあるとのこと。作者の時代小説は本作が確か初めてであったかと思いますが、なるほど、今は同じ国でありながら、本土の人間にはほとんど知られていない沖縄の歴史を語る作品を作者が書くのはむしろ必然のようにも感じられます。

 さて内容の方に目を向ければ、薩摩侵略の前奏曲ともいうべき、クライマックスの薩摩側の傭兵たちと、租界の人々の攻防戦はなかなかの迫力。そんな中で、カイナの親友・隆吉郎の師である老武芸者、その名も佐々木小次郎(!)が、傭兵方の武芸者・宮本武蔵(!!)と壮絶な血闘を繰り広げるシーンなどもあり、なかなか楽しませていただきました(この決闘シーン、互いに刀を打ち合わせないで剣戟が繰り広げられる辺りに不思議なリアリティがあって良し)。
 その一方、カイナが複数の敵を対手に、初めての「殺し合い」を繰り広げるシーンの呼吸は、どことなくライトノベル調で、作者のバックボーンが感じられるのが興味深いところです。


 さて、タイトルとなっている「黒指」とは、赤子の頃に父により関節を折られ、一本の鉄棒のように鍛え上げたカイナの左の親指のこと。まさに己の掌中に武器を持った少年が、嵐の時代の中で如何に生きることとなるのか。
 この第一回では比較的ニュートラルな描かれ方をされていたカイナの、今後の成長をまずは期待したいところです。


「黒指のカイナ」第一回(神野オキナ 「KENZAN!」第6号掲載) Amazon

|

« 「諸刃の博徒 麒麟」第4巻・第5巻 時代を対手の大勝負 | トップページ | 「大江戸ロケット」(漫画版)第2巻 リフトオフはまだ遠い? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/41999857

この記事へのトラックバック一覧です: 「黒指のカイナ」第一回 少年は嵐の中へ:

« 「諸刃の博徒 麒麟」第4巻・第5巻 時代を対手の大勝負 | トップページ | 「大江戸ロケット」(漫画版)第2巻 リフトオフはまだ遠い? »