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2008.08.18

「花かんざし捕物帖」第2巻 不幸な女人たちへの眼差し

 山風先生の「おんな牢秘抄」を島崎譲先生が漫画化した「花かんざし捕物帖」の第二巻が発売されました(ちなみに八月の講談社コミックスは、この他にせがわ先生の「Y十M」「バジリスク」文庫と、ちょっとした山風祭りに)。今回は、第一の事件、曲芸師のお玉の物語の解決編と、第二の事件、御家人の妻のお路の境遇の語りまでが、収録されています。

 内容的にミステリであり、また形式的には連作短編スタイルということもあって、なかなか二巻で描かれている内容自体に、ここで触れるのは難しいのですが、この巻から「姫君お竜」の本格的活躍が始まることもあり、いよいよ物語は華やかに、艶やかに動き出したという印象。前半ではお竜の神出鬼没の活躍が小気味よく描かれる(見世物小屋で、自分めがけて投じられた手裏剣を受け止める際のアクションが印象的でした)一方で、後半ではお路が体験した夢魔めいた愛欲の世界がねっちりと描かれ、硬軟(?)とりまぜての描写の巧みさは、さすがにベテランの島崎先生ならでは、と感じます。
(ただ、直参であの髪型はどうなのかしらん)


 さて、以前私は、第一巻の感想を書いた際に「確かに意外なチョイス、意外な取り合わせではありますが、その味は悪くありません」と本作を評しましたが、しかしその印象は誤りだったかもしれません。
 なぜなら、この第二巻を読むに、この島田先生による「おんな牢秘抄」漫画化は意外どころか全く違和感なく、味が悪くないどころか、見事な味わいを醸し出しているのですから――

 山風作品の中でも、原作はかなり異色の作品。内容自体はかなりきっちりとした時代推理ものながら、やはりお姫様が女囚牢に潜入しての活躍というのは、正直なところ、特異体質の忍者同士の死闘よりも、一層現実離れして感じられます(もちろん、それは作品自体の面白さとは全く別の問題であります)。
 しかし――その原作が島崎先生の筆をもって描かれた本作を見れば、そんなことに拘るのが愚かしく思えてきます。現実離れしていると思おうが思うまいが…確かにお竜は、不幸な女人たちはここに――可憐かつ華麗な姿でもって――はっきりとビジュアライズされ、生き生きと動き回っているのですから。

 こと本作においては、原作者は最良の作画者を得た――というのはほめすぎかもしれませんが、少なくとも原作の持ち味を十分以上に引き出していることは間違いありません。


 ちなみに、この第二巻で私が最も好きな場面は、冒頭でお竜が同牢の女囚たちに差し入れをするくだり。
 本筋には直接関わってこない(はずの)場面ではありますが、お竜の心根の美しさと、作者が不幸な女人たちに向ける眼差しの優しさが感じられて、心に残ります。


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関連サイト
 作家インタビュー

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