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2008.08.08

「小説無限の住人 刃獣異聞」 もう一つのむげにんワールド

 剣流統一を画す逸刀流に父を殺された少女・凜は、不死身の男・万次を用心棒とする。逸刀流との戦いを開始する二人だが、しかし彼らの他に逸刀流を狩る影あった。犬の仮面をつけた奇怪な巨漢・イヌガミ――到底常人とは思えぬその存在に凜は関心を抱く。そして遂に逸刀流統主・天津と彼らが対峙する時が来た…

 書店で見かけぬ「無限の住人」の単行本を見つけて、不思議に思って手に取ってみれば、これが何と小説版。それも、作者は大迫純一先生というのに驚きつつ、早速読了いたしました。

 読む前は、原作では描かれなかったエピソードを描いた外伝的内容かと勝手に思っていましたが、これが何と、原作を冒頭から再構成してオリジナル要素を加えた、いわばアナザーストーリーとでもいうべき内容。凜と万次の出会いから始まり、黒衣や凶との戦いを経て、何と無骸流の面々も早々に登場(もっとも、現在放映中のアニメ版でも冒頭から登場していますが)、オリジナルキャラクターを加えて、三つ巴で結末になだれ込んで行くという展開になっています。

 一から物語を始めた上に、原作の序盤~無骸流登場あたりまでのレギュラーキャラをほぼ総登場させて一冊にまとめたという性質上、一人一人のキャラの出番はそれほどでもないのですが、元々が個性の塊のような――その、原作でのブッ飛んだ服装や言動を律義に文章で表しているのが楽しい――連中の上に、それぞれの出番での描写が、原作の味をよく踏まえたものになっていて、違和感や不足感をほとんど感じさせないのは、これはなかなかのものだと思います。特に、黒衣の得物を巡る凜と万次の会話は、二人の微妙な距離感をうまく描いていて感心しました。
(もっともこれは原作読者ゆえの感想で、全く初体験の状態で読めばまた別の感想があるかもしれませんが――)

 さて、原作読者であれば、万次さんの出番のなさというか、勝率の悪さはよくご存知かと思いますが、実はその点は本作でも健在。はじめこれも、一種の原作再現なのかしらんと意地悪なことを考えてしまいましたが、しかしこれがまるで勘違いであったことを思い知らされるのが終盤の展開。
 少々ネタバレになってしまいますが、凜の用心棒である万次が、結果的とはいえ、逸刀流の人間をほとんど斬っていないという状態が、終盤に至って、思わぬ問い掛けを凜に対して投げ掛けることとなります。

 その問い掛け自体は、原作でも幾度となく登場するものではありますが、しかしそれが、このアナザーストーリーとしての展開とうまく噛み合って、何とも言えぬ重みを見せるのには、ただ感心させられた次第です。
 そしてもう一人の万次とも呼べるかもしれないオリジナルキャラ・イヌガミとの死闘を経て、父母の仇である天津を前にした凜がとった行動は、この問い掛けの――つまりは「無限の住人」という物語のテーマの一つへの――答えとして、納得のいくものであったと感じます。

 もちろん、ノベライゼーションゆえの様々な――上に述べたようなキャラ総登場など――制限はあり、またオリジナルキャラもちょっと新味に欠ける部分はあるのですが、しかしもう一つの「無限の住人」として、しっかりと成立している作品だと、感じている次第です。


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