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2008.08.14

「百物語怪談会 文豪怪談傑作選特別編」 文化人の語る怪

 実は僕は怪談、それも実話怪談というのが大の好物なのですが、本書は名だたる文化人たちが集まっての怪談会の模様を収めたもの。実に僕好みの一冊です。
 本書に収録されているのは、「怪談会」「怪談百物語」という、いずれも今からほぼ百年前に発表された怪談記であります(付録として、一種の怪談会記録「不思議譚」も収録)。

 この二つの怪談集に登場するのは、泉鏡花をはじめとして、小山内薫・長谷川時雨・鏑木清方・柳田国男など、実に錚錚たる顔触れ(マニア的には、どちらにも水野葉舟が参加しているのがたまらない)。個人的には絵画も随筆も大好きな清方の怪談が掲載されているというだけでたまりません。

 もっとも、収録された怪談の内容といえば、これは全くもって玉石混淆と言うほかなく、現代の実話怪談ファンの目から見て楽しめるものばかりかと言えば、これは正直に申し上げて首を傾げるしかなく…特に、幽魂(含む生き霊)の知らせネタ――死の間際に知人に挨拶に来るというアレ――が異常に多いのには閉口いたしました。

 しかし、ある意味内容以上に感心してしまったのは、この時期――二十世紀初頭という自然主義文学の勃興期に、これだけの文化人が寄り集まっては怪談を楽しんでいたというその事実。
 本書でも大活躍の泉鏡花と、自然主義文学の関係を考えると、この怪談会の発表時期は何とも意味深く感じられる…というのは半可通の言い草かもしれませんが、面白い符合ではあります。

 何はともあれ、本書に描かれた怪談会の参加者の姿からは、語るのがどれほど恐ろしい物語であっても、どこか愉しさのようなものが感じられます。
 おそらくはこれこそが、怪談がいつの世にも――程度の差はあるのかもしれませんが――受け入れられる由縁なのではないかなと、若干の羨ましさとともに感じた次第です。


「百物語怪談会 文豪怪談傑作選特別編」(泉鏡花ほか ちくま文庫) Amazon

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