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2008.08.02

「遺恨の譜 勘定吟味役異聞」 巨魁、最後の毒

 八代将軍を巡る暗闘が激しさを増す中、紀伊国屋文左衛門の手により、米相場が暴落する。新井白石の命でこれを追う水城聡四郎と家士の大宮玄馬に次々と刺客の群れが襲い掛かる。その一方、死の床にあった柳沢吉保は、遂に大奥に将軍暗殺の手を伸ばす――

 いよいよ終盤戦に突入した勘定吟味役異聞シリーズ、第七巻の本作では、シリーズ当初から主人公たちの巨大な壁であった柳沢吉保が遂に姿を消すこととなります。
 しかしその妄執とも言うべき徳川綱吉への忠誠心は、徳川将軍家への毒針と化し、最後の最後まで、物語を不気味に掻き回すのが、何ともこの人物らしいところです。

 その吉保をはじめ、八代将軍位を巡るプレイヤーたちの間に挟まれて今回も苦闘を繰り広げるのはもちろん聡四郎。上田作品では、主人公が複数の勢力に付け狙われるのはまず常態ですが、本作でも次から次へと襲撃やストーキングに悩まされることとなります。
 正直なところ、読んでいるうちに、この刺客は誰が送ったものかしらんと混乱する場面もなきにしもあらずですが、読者ですらこうなのだから、聡四郎自身はもっと大変だろう…と変な感心の仕方をしてしまうことも。

 本作ではそんな聡四郎が、罷免されることもなく――言われてみればこれは確かに不思議な話で――勘定吟味役を続けることができる理由が描かれ、なるほど! と膝を打ちましたが、これももちろん聡四郎自身のためを思ってではないところがまた辛い…

 表向きは不気味に静まり返った水面下で繰り広げられる八代将軍位を巡る暗闘。聡四郎は、そこに波紋を起こすために投げ込まれる石の役割を担わされることとなりそうですが――しかし、石ころにだって意地が、自分自身の意志がある。武士として人間として、聡四郎がこの状況に如何に立ち向かっていくのか…いよいよ目が離せなくなってきました。


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遺恨の譜―文庫書下ろし/長編時代小説 (光文社文庫―勘定吟味役異聞 (う16-8))


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