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2008.08.29

「鏡花あやかし秘帖 夜叉の恋路」 オカルト探偵鏡花

 駆け出し編集者の香月真澄は、あこがれの作家・泉鏡花の担当となるが、鏡花は常人では見えないもののけたちと親しく交わる不思議な男だった。折しも東京では美少年の連続猟奇殺人事件が発生、その犯人が、一高時代の敬愛する先輩ではないかと考えた真澄は、鏡花に助けを求める。

 「鏡花あやかし秘帖」シリーズ第一弾(の新装版)であります。調べてみると色々と複雑な経緯を辿ったらしい本シリーズですが、現在収録されているレーベルで、本書のように未刊だった作品も収録されるとのことで、これからシリーズに触れようという方にはありがたいことではないでしょうか。

 このシリーズ、美少年(という年ではありませんが)で大の怖がりながら霊感を持つ雑誌編集者・香月真澄君を狂言回しに、もののけと親しく交わり、不可思議な術まで操ってしまう泉鏡花先生(もちろんあの鏡花であります)が、様々な事件に挑むという、一種の怪奇探偵ものであります。
 レーベル的にはBL小説レーベルだけに、「あ、ほも」的内容は色々とあるのですが、まあ男性読者が読んでもギリギリ嫌悪感を抱かないくらいの内容にはなっているので、このブログでも紹介する次第です(明記していませんがこのブログは全年齢全性別を対象としております。おりますったら)。

 シリーズとして見た場合、感心させられるのは鏡花先生をオカルト探偵に仕立ててみせた作者の着眼点。その作品の内容もさることながら、様々な奇行をもって知られる鏡花先生だけに、もののけたちを周囲にはべらせ、怪奇な事件に対峙しても、何となく納得してしまう部分があります(これが例えば岡本綺堂先生だと、そのまま「半七」や「三浦老人」になってしまいますし…)。
 考えてみれば、伝奇ものにしばしば登場する怪しげな賢者役に、ほとんど素のままで実によくマッチする存在である鏡花(しかもハンサムですしな)。この鏡花を脇役とした作品は数々ありますが、主人公に据えたというのはなかなかにコロンブスの卵だと思います。

 さて、単独の作品としての本作ですが、内容的には可もなく不可もなくといったところ。どう考えてもシチュエーション的に雨月物語のあの作品そのままだなあ…と思っていたら、作中でも言及されていたのには苦笑しましたが、題材的にこのレーベルにピッタリとしかいいようのないあの物語を、明治の帝都東京に甦らせたのは、なかなかよいチョイスではないかと思った次第です。
 シリーズの導入編としては、悪くない内容かと思います。


 ちなみに本書には、他に二編、短編が収録されています。真澄君が不思議な水晶玉に魅入られた顛末を描く「水晶の夢」は、掌編ながらなかなかに幻想味が良く出ていて、鏡花の活躍は少ないものの、それがかえって違和感なく受け入れられる内容でありました。
 もう一編の「白菊の露」は…さすがにちょっと。ここで内容には言及しません。


「鏡花あやかし秘帖 夜叉の恋路」(橘みれい 学研もえぎ文庫) Amazon
夜叉の恋路 (もえぎ文庫 鏡花あやかし秘帖)


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