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2008.09.06

「神雕剣侠 1 忘れがたみ」 未曾有の恋愛伝奇プロローグ

 大侠・郭靖は、女怪・李莫愁が起こした騒動の中で、義兄弟の忘れ形見・楊過と出会う。桃花島に引き取られた楊過だが、周囲と反りが合わず、全真教に預けられるが、そこでも問題を起こして飛び出してしまう。逃げ込んだ地下墳墓で彼が出会ったのは、全真教を敵視する古墓派の美少女・小龍女。彼女を師と仰ぎ、共同生活を送る楊過だが…

 名作「射雕英雄伝」の続編である「神雕剣侠」の第一巻であります。
 前作の登場人物たちの子供達といった次の世代が活躍する、いわばネクストジェネレーションでありますが、物語の趣向は大分異なる本作。前作が、少年の成長物語が主題であったとすれば、本作は堂々の純愛ロマン。激動の時代と、武林の掟に幾度となく引き裂かれながらも、至純の愛を貫いた男女の物語であります。

 金庸作品といえば、誤解と運命のいたずらの連鎖が、物語の歯車を回していくのがいつものことですが、それが恋愛ものと合わさった時、どれほどの効果を上げたかは、本作のファンの多さを考えればわかります。

 もっともこの第一巻は導入部といったところ。主人公カップルである楊過と小龍女もまだまだ若く、特に楊過はまだまだ人を愛することのなんたるかもわからぬ少年。
 一方の小龍女も、それまでの人生を、感情を殺したまま墳墓の中で過ごしてきた女性で、それぞれ違った意味でピュアな二人が、やがて互いを無二の存在と感じていく様が、この巻の見所でしょうか。

 もっとも、個人的に何度読んでもひっかかるのはこの巻後半の小龍女の変わりっぷりで…生死の瀬戸際にあったとはいえ、いきなり「女」の部分が出てくるのはどうなのかしらん、と感じます(この辺り、金庸先生の女性観がだいぶ顕になっている…と言ったら怒られるでしょうか)。

 さて、本作ではダメ人間度がやたら高い印象のある――金庸先生、何か怨みでもあるのかしらん――全真教の、その中でも特にダメな某氏の暴走のおかげで、この巻の終盤で、最初の別離を経験することとなった楊過と小龍女。まだまだ二人の受難の愛は始まったばかりですが、いや、やはり何度読んでもこのヒキの強力さには感心する次第です。


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