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2008.09.29

「奇談異聞辞典」 奇談怪談ファン必見の随筆辞典

 個人的なお話で恐縮ですが、私が小さい頃になりたかったものの一つに「物知り」があります。博覧強記で何でも(特に人の知らないような分野)を知っている人に大いに憧れていた――というより今も憧れているのですが、その憧れの対象の一人が、本書の編者である柴田宵曲であります。

 宵曲氏は、明治から昭和前期にかけて、俳句の世界で活躍された方ですが、その一方で折りに触れて発表した随筆は、まさに博覧強記としか言いようのない氏の一面が現れていて、読むたびに新鮮な味わいがあります。
 特に、日中の古典で語られた事物「そういえば○○にはこういう話もある」とばかりにを融通無碍に引き出して話題を転がしていく様には、ただただ感心するばかり。ああ、こんな「物知り」になりたい…などと考えるのは僭上の限りかもしれませんが、私の素直な気持ちです。

 さて前置きが長くなりましたが、本書は「随筆辞典」の一冊「随筆辞典 奇談異聞編」として、五十年近く前に編纂されたもの。その内容については、旧題及び現題をご覧いただければ瞭然かと思いますが、近世の随筆集の中から、奇談異聞――すなわち、妖怪変化や幽霊、怪奇事件の類を選り抜いて五十音順に配列してみせた、この手のお話が大好きな人間にとっては、まさしく夢のような書物であります。

 随筆の抜粋ですので、残念ながら宵曲氏の文章そのものはほとんど味わえないのですが、しかし、さすがに宵曲氏が纂修しただけあって、その内容は、実にバラエティと魅力に富んだものであることは間違いありません。
 元となった随筆集も、「甲子夜話」「耳嚢」といったメジャーどころはもちろんのこと、名前もほとんど聞いたことがないようなものまで含まれていて、そのカバー範囲の広さには、さすがは…と感心するばかりであります。

 宵曲ファンはもちろんのこと、奇談怪談ファン――ことに、「その談柄の豊富なもの、狐狸の如き、天狗の如き、河童の如き、亡霊幽魂の如きは、類聚排列することによって、いさゝか研究の領域に近づくことが出来るであろう。」という氏の言葉に共感できる方であれば――であれば、必見というほかない名著であります。
 ちくま学芸文庫だけあって、文庫でも少々お高いですが、それだけの価値は間違いなくある! と断言させていただきます。


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奇談異聞辞典 (ちくま学芸文庫 シ 22-3)


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