「柳生一族の陰謀」 究極にして異端の但馬守像
元和九年、突如二代将軍秀忠が病死したことにより、三代将軍を巡る家光と忠長の争いが激化する。秀忠が実は家光派の松平伊豆守らに毒殺されたことを知った柳生但馬守宗矩は、同じ家光派に付き、子供達を使って忠長追い落としの策謀を巡らす。禁裏をも巻き込み、日本を二分した暗闘の行方は…
この28日にTVドラマとしてリメイク版が放映される「柳生一族の陰謀」。よく考えてみればオリジナルについても当サイトではまだ紹介しておらず、これはこのタイミングでやらねば! と久々に見直してみましたが…やはり何度見ても凄まじい作品、と言うほかありません。
本作の魅力については、まさに予告編の
「骨太い人間たちによる骨太いドラマ」
「映画・演劇・TV界の豪華スター群を集めて放つ愛と斗争の大ロマン」
「時代劇の魅力を徹底的に描ききった愛と斗争のドラマ」
といった言葉で言い尽くされていると言うほかなく、今振り返ってみれば、存在すること自身が奇跡的と申しましょうか、時代劇映画、そして柳生もの時代作品の一つの頂点、と言っても過言ではないでしょう。
ことに、これほどまでの豪華キャストを投入しながら、そのほとんどに過不足なく見せ場を与え――作中のそれに劣らず凄まじく複雑な勢力バランスを調整した結果だとは思いますが――人間群像ドラマとしてまとめてみせたスタッフの手腕には、驚嘆するほかありません。
しかし、今回比較的冷静に見ることができたため、今更ながら感心させられたのは、柳生但馬守役の萬屋錦之介の、極めて抑制された演技であります。
あまりに印象が強すぎるためか、萬屋錦之介の柳生但馬守というと、あのラストの狂乱ぶりが真っ先に浮かぶ方も多いかと思いますが、それ以前の劇中での但馬守=錦之介の姿は、静謐と言ってよいほどの落ち着きぶり。
権力闘争の中心にある陰謀家というイメージとはまた異なる、むしろ超然とした姿からは、彼自身が何かの化身であるかのような印象――ラスト直前の名古屋山三郎との会話から浮き彫りになるように、彼が人間の情愛を無視している、というよりその存在を理解できない、という点が、その印象に拍車をかけます――すら受けるのです。権力を巡る暴力の嵐の中心にあって揺るがぬその姿は、彼がその嵐を巻き起こしたというよりは、嵐が彼の姿を取った、というような。
陰謀家としての但馬守は、「柳生武芸帳」と本作が一つの極であり、後世に与えた影響は絶大なものがあるかと思いますが、しかし、本作の但馬守像が、後続の作品に登場するそれとまた異なるものであることは、実に興味深いことです。
まあ、ここで錦ちゃんが「破れ」ちゃったら、ただでさえカオスな世界が完全に崩壊してしっちゃかめっちゃかになることは目に見えてはいますので、これは単なる結果論かもしれません。
しかし本作の但馬守像は、一つの究極であると同時に他では見られぬ異端のものであり…そしてそれが、本作を単なるアクション活劇時代劇に終わらせず、時代の巨大なうねりというものを描いた一種歴史ドラマ的味わいを――開始早々に豪快に史実を無視しているにもかかわらず――与えているのではないかと、私は感じた次第です。
リメイク版は、その辺りがどう描かれているかが気になりますが…どうでしょうねえ。
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コメント
まさしく同感です。
年々仰々しさと重厚さが過剰になり、不自然の域まで到達していると感じる松方弘樹氏がどんな演技を見せるかが今回のリメイクでの一番の懸念材料であり見所です、個人的に。
投稿: 伯爵 | 2008.09.27 01:25
うーむ、松方弘樹は頑張ったんですがストーリー構成が何というか、こう…但馬守と同じくらい十兵衛と阿国がポスターで目立っていた時点でアレだったのですが
投稿: 三田主水 | 2008.09.29 00:52
確かにTV向きにストーリーを再構築した感じがしますね。
オリジナルの構成は深作監督の仕業かな・・・とふと思いました。
投稿: 伯爵 | 2008.09.30 20:11
やっぱりその時代(製作された時代)の空気というものもあるでしょうね…
オリジナルの構成は、本当に奇跡的によくできたものだと感じます。あれは大変だったと思いますね。
投稿: 三田主水 | 2008.10.02 00:18