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2008.09.20

「禁裏御みあし帖」 普通のおっさん、天下を揺るがす

 三十も年の離れた押し掛け女房を得た冴えない八卦見・十六斎は、井伊直弼の死を予言したことで、開国派と攘夷派の争いに巻き込まれてしまう。さらに、替え玉と噂される皇女和宮の真贋を見極める「禁裏御みあし帖」争奪戦に巻き込まれた十六斎夫婦。中山道を行く和宮の行列を巡る攻防戦の行方は…

 青春時代伝奇の佳品「総司還らず」の姉妹編が本作「禁裏御みあし帖」です。幕末、皇女和宮降嫁を巡り、幕府・禁裏・薩長の複雑な思惑のぶつかり合いに巻き込まれてしまった足裏占いの夫婦の冒険を描くユニークな伝奇譚であります。

 和宮は、つい最近も大河ドラマ「篤姫」に登場しましたが、幕末に翻弄された悲劇の女性として描かれることがほとんどです。
 もちろん本作でもそれは異なることはないのですが、しかしここで描かれるのは和宮替え玉説という伝奇的変化球。
 しかも面白いのは、輿入れする和宮が果たして真の和宮であるかを判別する証拠となるのが、皇族の足袋を作るための寸法帖である「禁裏御みあし帖」であり、そしてそれを唯一判読することかできるのが、足裏占い師である主人公・十六斎であるという設定でしょう。

 ここに、御みあし帖、そして主人公の身柄を巡る争奪戦が展開することとなるわけですが、災難なのはもちろん十六斎。足裏占いというほとんど予言めいた能力を除けば、助平でがめつくてお人よしの単なる中年のおっさんが、事と次第によっては、日本を真っ二つに割りかねぬ爆弾を抱えることとなってしまうのですから…

 しかし、このごく普通のおっさんが天下の趨勢を決する存在となるのが、本作の醍醐味であります。
 どうもご立派英傑ばかりが天下国家を巡って活躍していたように錯覚してしまいそうになる幕末という時代。その裏側の非情に翻弄されながらも、必死の思いで生き抜いていこうとする十六斎夫婦の姿は、ほほえましくも、人間の自然な情を否定して成り立つ歴史というものに対する痛快な異議申し立てとして感じられます

 創意溢れる時代伝奇であると同時に、歴史のダイナミズムに真っ向から立ち向かう――あくまでも等身大の――人間の姿の素晴らしさを活写してみせた快作です。


 しかし、どうしても十六斎夫婦の姿が、作者ご夫妻に被って見えるのだよなあ…というのは失礼かしら。


「禁裏御みあし帖」(えとう乱星 中央公論社C・NOVELS 全2巻) 上 風雲京洛篇 Amazon/ 下 和宮道中篇 Amazon

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