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2008.10.26

「ICHI」第1巻 激動の時代に在るべき場所は

 先日公開された綾瀬はるか主演の「ICHI」のコミカライズであります。子母沢寛の「座頭市物語」をベースにした「座頭市」をベースにした「ICHI」をベースにした…というとややこしいですが、本作は本作で独自の魅力を持った作品として成立しており、楽しめます。

 まだ映画の方は見ていませんが、この漫画版では、主人公である座頭のお市と、その相棒とも子分ともつかぬ浪人・藤平十馬の二人のキャラクターのみを借りた全く別の作品の様子。
 舞台は幕末――既に開国が行われたものの、国内は尊皇と佐幕に割れ、物情騒然とした時代。そんな世界で繰り広げられるドラマを、連作短編形式で描いていきます。

 この第一巻に収録されているのは、全五話、三つのエピソード。
 ヘボンを狙う清河八郎ら攘夷浪士と市が対決する「憂国の士」、盲目の女ばかりを狙った槍突きの狂気を描く「折れた魂」、市が武州日野宿の貸元の用心棒として近藤勇らと対峙する「天然理心流」…いずれも幕末の有名人を配したキャッチーな構成ではあるのですが、しかしそれぞれの物語は、そうした有名人のキャラクターに寄っかかったものではないのに、好感が持てます。

 本作のエピソードに共通するのは、登場人物の多くが、激動の時代に翻弄され、己の在るべき場所を――すなわち、あるべき自分自身を――見失っていること。そんな人々の悲劇が、本作の物語を作り上げているのです。

 そんな中でただ一人、揺るぎなく在って裁断の刃を振るうのが市なのですが…しかしそれは、逆に彼女の在るべき場所が全くないが故にも感じられるのが、何とも切ないところであります。

 彼女が刃を振るう由縁は、未だ語られていませんが、その由縁が描かれる時の彼女の姿に――悪趣味かもしれませんが――強く興味をそそられます。
 映画のコミカライズの域を超えて、楽しみな作品であります。


「ICHI」第1巻(篠原花那&子母澤寛 講談社イブニングKC) Amazon
ICHI 1 (1) (イブニングKC)

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コメント

おおお!こんな作品が出ていたのですね。

勝新の座頭市、むかし一本だけ見たことがあります。主人公の不思議な・・・・風格といいますか、威厳が記憶に残っています。北野武版も楽しかったですが、やはり軽いですね。

投稿: 富山 | 2008.10.30 19:50

富山様:
昔の座頭市とも、今回の座頭市ともまた異なる作品だと思います。
いかにも今風の時代漫画ではありますが、なかなか面白いですよ

投稿: 三田主水 | 2008.11.02 20:54

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