「魔京」第二篇「髑髏京」 京と京、システムとシステムの対決
太政大臣として権勢を恣にする平清盛は、平氏が宇宙の中心として栄える世界を生み出すため、世界の中心を規定する力を持つ「京魄」(ミヤコミタマ)を用いて、福原への遷都を目論んでいた。だが何者かが京魄を強奪し、清盛の依頼で探索にあたった真言僧・文覚は、敵の意外な正体を知る。平氏と源氏の争いが激化する中、京のゆくえは…
第一篇の紹介をしてからだいぶ時間を空けてしまったうちに、平安篇・室町篇・安土桃山篇が終了し、江戸篇に入った朝松健の長編連作伝奇「魔京」。時空に干渉して過去と未来を変容させ、世界の中心を規定する力を持つ呪具・京魄を中心に据え、この国の「京」とは何かを描いていく本作を、これから駆け足で追いかけていきたいと思います。
今回取り上げるのは、第二篇「髑髏京」。平安時代末期、平清盛を中心に、新たなる京を求める者と、旧来の京を守らんとする者の争いが描かれます。
今回のエピソードでまず感心させられるのは、物語の中心となる舞台――というより目的地と言うべきでしょうか――を福原としていることであります。
福原は、わずか半年間とはいえ、確かに我が国の中心たる京だった地であり、そしてその特異性は、史上初めて、武家主導により開かれた京であることにあります。言ってみれば、福原遷都は京概念の一大転換であり、その意味で、京の意味を伝奇的に問い直す本作にまことに相応しいものと言えるのです。
その福原遷都を巡る争いを、本作では、単に平氏と朝廷・源氏の間の主導権争いとしてだけではなく、世界を変容せんとするシステムと、世界を維持しようとするシステムとの衝突として描くのですから凄まじい。その戦いは当然、現のものに留まるはずもなく、悪源太義平をはじめとする源氏の死霊武者が跳梁し、謎の思念投影体と文覚が秘術でもって激突し――作者お得意の妖術合戦に突入し、歴史上に残るある事件が、その霊的闘争の果てのものとして描かれるのには驚かされます。
その一方で――分量的には中編ではあるところに、優に大長編一本をかけるほどのアイディア、ガジェット、キャラクターを贅沢に投入したがために、かえって物語が語り足りなく思える部分があるのが個人的には残念なところ。
一つ一つの事件、戦いが、淡々と――もちろんそれ自体として見ればはきっちりと面白く、盛り上がっているのですが――描かれていくのは、これはこれで歴史の冷徹さというものが感じられるのではありますが…(特にラストは、これで終わり? と感じながらも、同時に、これで良いのだな、と感じさせられる不思議な幕切れでありました)。
時間と空間の巨大な動きの前には、一人の感慨も小さなもの、と思うべきでしょうか。もっとも本作では、その時間と空間の運行すら、決して不変のものではないのですが――
「魔京」第二篇「髑髏京」(朝松健 「SFマガジン」2007年1月号、3月号、5月号掲載)
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