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2008.10.07

「シャクチ」 新たなる古代日本ファンタジー世界の誕生

 「入魂の新シリーズ開幕!」と銘打って、「小説宝石」誌に掲載された荒山徹先生の新作「シャクチ」。ファンのはしくれとして、荒山作品のパターンもある程度はわかっていたつもりでしたが、なるほどこれは新シリーズと言うにふさわしい、これまでの荒山作品とは、場所も時代もテイストも異なる作品となっておりました。

 この作品の舞台となるのは、紀元前三世紀の中国と日本。この時代の中国と言えば、秦の始皇帝が歴史上初の統一王朝を打ち立てた頃であります。
 ここで勘のいい方、あるいは伝奇好きの方であればすぐにお気づきかと思いますが、始皇帝と日本を繋ぐものと言えば、始皇帝の命により、東海の三神山に不老不死の仙薬を求めて旅立った末に、日本に辿り着いたというあの人物。そう、徐福であります。

 本作の主人公の一人は、その徐福(作中では異称の徐市(正確には「くさかんむりに市」)と表記)。過酷な旅の末、ただ一人オオヤマトに漂着した彼が出会ったもの――それは蛇神を崇拝する未開の部族の青年・サメマでありました。
 サメマの部族のもとで不老不死の法を修め、大陸に帰った徐市に対し、始皇帝はオオヤマトの侵略を命じるのですが…

 と、朝鮮も柳生も、そして過剰なパロディもない本作。描かれるのは、極めて真っ当な(?)伝奇ファンタジーであります。
 先に述べたように有名な「史実」である徐福の渡来を、巧みに換骨奪胎して独自の古代世界観・古代史観を構築している様には、荒山先生の地力というものを感じさせられます。


 さて――本作の末尾に掲げられた参考・引用文献の中にあったのは、あのブライアン・ラムレイの「地を穿つ魔」。これには仰天するとともに驚喜いたしましたが、しかしそれ以上に、本作の雰囲気は何かに似ているような…と思っていたところに、ネット上での炯眼の士の指摘に、アッと驚くとともに納得いたしました。
 本作を覆うムードは、ラムレイよりもむしろR・E・ハワードの怪奇色濃厚なヒロイックファンタジーによく似たものがあったのです。

 なるほど、当時の「文明国」たる秦=中国から見れば、オオヤマト=日本は暗黒大陸ならぬ暗黒島。その暗黒の世界から単身乗り込んできたサメマ改めシャクチの姿は、ハワードの蛮人王に繋がるものがあります。
 そして何より感心すべきは、この場所、この時代を舞台とすることにより、見事に無理なく古代日本ファンタジー世界を構築してみせたことでしょう。

 あるようでいて存外少ない――特に大人向けの作品では――古代日本を舞台としたヒロイックファンタジー。もちろんまだ第一話ゆえ先のことはまだまだわかりませんが、本作が新たなる古代日本ファンタジー世界を切り開くことに、大いに期待したいと思います。


 ところでシャクチは、ミシャグジ神の転訛なのかしらん(日本側の舞台は三輪山周辺なので違和感はありますが…)


「シャクチ」(荒山徹 「小説宝石」2008年10月号掲載)

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