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2008.11.12

「主水之助七番勝負 徳川風雲録外伝」 四番勝負「死神剣 壱岐」

 前回はビデオを撮り損ねて見そびれてしまった「主水之助七番勝負」、今週はちゃんと失敗せずに見ることができました。
 そんな個人的事情はさておき、今回登場する剣鬼は平田壱岐。…そんな剣鬼いたかな? と思いきや、知らないはずですこの名はもじり。ベースとなった「剣鬼」シリーズ中の作品は「平手造酒」でありました。

 平手造酒は、年配の方であればよくご存じかと思いますが、元は「天保水滸伝」の登場人物。元々は千葉周作門下の北辰一刀流の高弟でしたが、酒が元で身を持ち崩し、流れ流れて下総で笹川の繁蔵の客分となり、繁蔵一家と飯岡助五郎一家との、いわゆる大利根河原の決闘で命を落としたと言われる、実在したものの、半ばフィクションの住人とでも言うべき人物であります。
 柴錬先生は「剣鬼」シリーズの中で、この平手造酒を、生来奇矯な振る舞いが多く千葉道場を破門された肺病病みの妖剣の遣い手、代々首斬り役の家系に生まれたことにコンプレックスを持つ複雑な精神の持ち主という、いかにも柴錬チックな人物として再生させています(ちなみに平手造酒は、同じ作者の長編「遊太郎巷談」では、作者のライバルとして登場します。柴錬先生のお気に入りだったのでしょうか)。

 今回、その平手造酒が平田壱岐となったのは、さすがに時代劇界の有名人、それも天保時代の人物を、享保時代を舞台とした作品に出すのはちょっと…ということなのでしょう(まあ、それを言ったら善鬼の立場はないですが)。
 ちなみに今回の平田壱岐は、心形刀流伊庭道場出身という設定。平手造酒の北辰一刀流千葉道場とはちょっと響きが似ているかもしれません。

 さて今回は、その平田壱岐が、愛人の元深川芸者・蔦吉と放浪の旅を続けるうち(この辺りは原作通りの設定)、辿り着いた下諏訪でやくざ同士の争いに巻き込まれるというストーリー。繁三ならぬ茂三親分が何者かに殺され、仇討ちに逸る子分衆に雇われ、助五郎親分の首を取ることになるのですが、実は…という展開で、何だかこの番組、毎回剣鬼は騙されて利用されているような気がします。

 主人公たる主水之助は、茂蔵を殺したのが実は宿敵・善鬼であったことから事件に巻き込まれるのですが、その最中で、壱岐は主水之助を好敵手と認め、死に花を咲かせるために、主水之助に最期の決闘を挑むことになります。
 「剣鬼」の中では造酒、蔦吉(いま見るとこのキャラクター、まるっきり共依存状態なのが興味深い)を捨て、大利根河原の決闘で凄絶に討ち死にするのですが、ドラマの方では二つの組が全面対決に至ることはなかったため、華々しい死に時をなくしてしまった人物として、何とももの悲しく、決闘の果てに主水之助に対して叫ぶ「何故もっと早く…俺の前に現れなんだ!」という科白が、切なく響きます。

 ちなみに「剣鬼」の中の造酒は、自分の呪われた生とは対照的な青い空を好む人物として描かれており、その点はこのドラマの方でもきちんと踏襲されていたのは好感が持てます。
 ストーリーは全く異なってはいましたが、この辺りのこともあり、私個人としては結構納得できるドラマ化ではありました。


 しかし――ラストのスタッフロールのバックが、悪行がばれて醜態を晒しながら切腹する代官と、荒れ果ててしまった宿場町の風景が交互に流れるというのが何とも凄まじく、壱岐の最期と合わせて印象に残った次第です。


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関連サイト
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