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2008.11.16

「幕末喧嘩博徒 諸刃の麒麟」 麒麟、最後の戦いは…

 かつて麒麟が一泡吹かせた一橋慶喜の陰謀で、将軍上洛の先行役として京に赴くこととなった狭山藩主・村上定守。旧知の定守のため、麒麟らも共に京に向かうが、そこで待っていたのは、桂小五郎操る千人の攘夷浪人たちだった。麒麟側はわずか二百余名、絶対的に不利な状況で、麒麟は起死回生の一手を打つ!

 幕末を舞台に、規格外れの博徒・麒麟が大敵を相手に大暴れする「諸刃の博徒麒麟」の第二部が、「幕末喧嘩博徒 諸刃の麒麟」のタイトルで単行本化されました。
 これまで黒船のアメリカ兵や土方歳三、一橋慶喜に島津久光といったとんでもない面子に喧嘩を売ってきた麒麟ですが、今度の相手はあの桂小五郎。今回も相手にとって不足はなし、であります。

 桂小五郎、後の木戸孝允については、維新の英傑である一方、「逃げの桂」の異名もあるように、いささか信用ならないイメージもあるのも事実。そのためあってか、フィクションの世界では悪役として描かれることもなきにしもあらずなのですが…本作での桂像も、その一環と言ってよいでしょう。
 常に二重三重の策を用意して絶対的に有利な立場から相手を追い詰め、万が一敵わぬ時には、配下を見捨てても生き延びる…そんな桂のネガティブな側面を具現化したような、イヤなイヤなイヤなヤツとして、本作の桂は描かれています。

 しかしイヤなヤツでも強敵は強敵…長旅の疲れも癒えぬまま、麒麟たちの前に立ちふさがるのは千人の攘夷浪人。幕府の威信を貶め長州の勢力を伸張せんとする桂の陰謀の下、大砲までも装備して迫る敵に、いかに麒麟は立ち向かうのか、というのが今回の眼目であります。
 多数を相手の戦いでは、トシ(土方歳三)とその配下相手の戦いが以前描かれましたが、今回は一回り以上スケールが違う。しかも自分のみならず、敬愛する定守を始めとする仲間たちの命を背負うこととなってしまうのですが…やはり麒麟は麒麟、実に意外かつ豪快な手段――これはぜひ映像で見てみたいものです――で大逆転を見せてくれます。桂もフルボッコになって、いや痛快痛快。


 が――ここで本作の最大の不満点が。この「幕末喧嘩博徒 諸刃の麒麟」は、このエピソードで完結、おしまい。
 まさに一巻の終わり、などと洒落る気にもならない、何とも腹立たしい仕打ちであります。

 次々と幕末の大物たちを叩き潰していく麒麟の運命は。やがては決定的に立場を違えることとなる、トシや直柔との友情の行方は。いまだ描かれていない、麒麟と定守の過去の物語は…そうしたこちらの興味を全て置き去りにして、パッと物語に幕が下りてしまうのだから堪ったものではありません。

 もちろんこんなことはよくあること、誰を責める気にもなりませんが、しかしもう少しどうにかならなかったのかな…と、雑誌連載終了時に感じた悔しさが、今更ながら甦った次第です。


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