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2008.11.22

「柳生烈堂 対決服部半蔵」 理屈抜きの時代エンターテイメント

 京で気儘に暮らす烈堂の前に現れた兄・宗冬。彼は、失脚し失意のうちに死んだ三代目半蔵正就の遺児・四代目半蔵が、幕府への復讐のため、キリシタンを扇動して大乱を起こさんとしていると烈堂に告げる。半蔵の企みを打ち砕くため、烈堂は長崎に赴き、隠れキリシタンの中に潜入するが。

 火坂先生の「柳生烈堂」シリーズ第三弾は、烈堂が四代目服部半蔵と対決する異色編。これまでの二作が、同門たる柳生新陰流との対決であったのに対し、今回はそれ以外、いや剣術者ですらない相手と対決することとなります。

 今回の敵役たる四代目服部半蔵は、服部半蔵正就の子という設定。半蔵正就といえば、家康に従って大いに功績のあった父・半蔵正成に対して、配下の伊賀者たちを私のために動かそうとして人望を失い、ついには前代未聞の伊賀者たちによるストライキを起こされて失脚したという人物。その失地回復のために大坂の陣で無謀な突撃を行い、そのまま戦塵の中に消えたと言われますが、フィクションにおいては半蔵正成の不肖の息子、馬鹿な二代目として描かれるのがほとんどの人物であります。
(ちなみに半蔵正就は、二代目半蔵と呼ばれることが多いのですが、本作では正成の父・半蔵保長を初代としてカウントしているため、三代目ということになります)

 本作においては、実は半蔵正就は狡兎死して走狗烹らるの喩え通り、陰謀によって抹殺されたものという設定で、その子である半蔵が、復讐のために第二の島原の乱を起こすべく、キリシタンを扇動しているというスケールの大きな設定。
 そのため、烈堂は直接の敵ではないキリシタンとも事を構えることになるのですが、その辺りのドラマも本作の見所の一つかもしれません。

 さて、冒頭に述べたとおり、本作は、前二作とは異なり剣の奥義を巡る剣術者同士の対決という趣向ではありません。そのため、烈堂の戦いにも求道的側面はなくなり、それと共に彼が主人公である必然性も薄れた感があるというのは正直なところ。
 しかしその一方で、枠が外されたことによりエンターテイメント性はむしろアップ、長崎から伊賀までを舞台に、派手なアクションを楽しむことができました。

 特に終盤には、思わぬスケールの決戦が展開、その前にはシリーズレギュラーのあの人物も顔を見せますが、彼の出自を知っている人間にとってはニヤリとできる展開でしょう。

 理屈抜きの時代エンターテイメントとして、なかなかよくできた作品であります。


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柳生烈堂―対決 服部半蔵 (ノン・ポシェット)


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