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2008.11.03

「キジムタン」 少女剣士の魂の遍歴の行方は

 卑弥呼の血と鬼道を継ぐ姫巫女の力により、人に害なす瘴鬼より人々を守り続けてきた神教国・邪馬徒の国。その姫巫女の血を引く由那は、国を姉に任せ、従者・武蔵と共に旅に出る。己のあるべき場所を求め、荒ぶる由那の魂の行方は…

 現在、綾瀬はるか主演映画「ICHI」のコミカライズを担当している篠原花那が、数年前に少女漫画誌に掲載した時代ファンタジーコミックを、「ICHI」単行本第一巻発売を機に読み返してみました。

 人の暗い情念に取り憑いて害をなす瘴鬼を討つ力を持つ少女剣士を描いた作品というと、よくある作品のように思えますが、本作の最大の特徴は、その主人公のキャラクター造形が、実に暗いというかゆがんでいる点。
 一国を治める姫巫女として皆に慕われる姉に強烈なコンプレックスを持ち、自らが瘴鬼を引き寄せるほどの負の感情を背負った少女――それが主人公・由那であります。
 その戦いぶりも、あえて相手の負の感情を高めて瘴鬼を引きずり出すなど、彼女の師である柳生十兵衛(そういう時代設定であります)の言葉を借りれば「邪悪なやり方」で。

 と、こう書くといかにもとんでもないキャラクターに思えますが、しかし、置かれた状況と彼女の能力の特殊さを差し引けば(あるいは加えて考えれば)、自分の居場所に悩む思春期のティーンズの想いの噴出として、これもありかな…と思わないでもありません。

 ただし、それが物語中で万全に描けているかと言えば、物語全体が単行本一冊分、全五話でエピソード的には約三編ということもあって、正直なところを言えば食い足りない印象があります。少々厳しい言い方ではありますが、問題提起のみで終わって答えの提示がない、とでも言いましょうか…

 「ICHI」のクオリティを見るにつけ、ほぼ未完と言ってよい本作を、少女剣士の魂の遍歴の行方を、今の作者の筆で読んでみたい…そう感じています。


「キジムタン」(篠原花那 スクウェア・エニックスステンシルコミックス) Amazon


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