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2008.12.30

「東京事件」第2巻 抹殺されしものの逆襲

 戦後日本を舞台に、時間にまつわる不可能事件に挑む歴史科学研究所、通称「歴研」の活躍を描く異色作の第二巻であります。掲載誌が「特撮エース」から「少年エース」に変更となりましたが、月刊誌連載となったことで、物語のテンポ・連続性は強まり、いよいよ物語は本筋に入ってきたような印象があります。

 この第2巻で描かれる4つの事件――冒頭の、気球とともに現れる何十年も容姿の変わらぬ男の謎を巡る事件をはじめとして、いずれも時間…それも失われた時間、なかったことにされた時間にまつわる怪事件であることは、第1巻のエピソードと共通です。
 しかしいささかこれまでと趣を異にするのは、それらの事件が緩やかな、しかしはっきりとしたつながりでもって、ある巨大な事件の存在を浮かび上がらせることです。

 それこそは、主人公・浦島正木の過去であり、物語の根幹を成す、東京への第三の原爆投下を巡る事件――東京事件。かつて確かに東京に投下されながらも、浦島による歴史改変によってその存在を抹消された原爆・トウキョウパンプキン。
 しかしその代償は決して小さなものではなく、浦島が意識のみが未来と過去を往復する時間失調症に悩まされるように、様々なゆがみが、戦後の東京に生まれることとなります。そして、そのゆがみを利用しようとする者の存在もまた…

 本作の内容は、民俗学の要素が色濃い大塚作品にしては、少々毛色の変わった作品にも感じられます。しかし、この第2巻の内容を見れば、ある歴史を守るために犠牲にされたもう一つの歴史と、その過程で抹消されたモノという構図が、実は、明治以降の近代日本で抹消されてきたモノたちの姿を描き続けてきた他の大塚作品とは共通のものであると気付きます。
(共通といえばロンギヌスの槍ネタですが、さすがに今回は強引すぎた印象が…いやこれは蛇足ですが)

 こうして考えてみれば、そうした存在とそれが生み出すゆがみを修正してきた他の主人公たちと、本作の歴研の存在は――その存在自体が、二つの世界にまたがった不安定なものであることも含めて――さして変わるものではないのです。
 その彼らが挑むことになるのは、歴史のゆがみが生み出した…いや、消し去ることができなかったある存在。果たしてその存在を抹消しきることができるのか。抹消された歴史の恐るべきカウンターに、浦島が、歴研がいかに挑むのか。実に気になるところです。


 にしてもドタマさんは元気だなあ…UFOオタクになっちゃったのはスパイMのベントラベントラが効き過ぎちゃったのかしら。


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