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2008.12.09

「夢視師と紅い星」 夢が繋ぐ二人の運命

 武田信玄の娘・松姫は、織田の若君との婚約を父に破棄されて以来、女を戦の道具としか見ない男たちを忌み嫌っていた。そんなある日、遠乗りに出た彼女は、奇妙丸を名乗る青年と出会い、心惹かれるが…数奇な運命に弄ばれる松姫の前に現れた、夢視師を名乗る二人が見せる真実とは。

 信長や信玄といった戦国時代の巨星を扱った作品は枚挙に暇がありませんが、決して当時を生きたのは彼らだけでなく、その周りに幽く光る星もありました。本作はそうした星のうち、戦国という世に引き裂かれた二人の男女の姿を描いた時代ファンタジーであります。

 本作は「花いのちの詩」シリーズの第一弾。女物の打ち掛けを羽織り、黒い仮面で半面を隠すという傾いたなりの青年・朧、平安時代の姫のような衣をまとい、玻璃の香炉を手にした大人びた口調の幼女・ゆかり――この二人の狂言回しが、時代時代に彷徨える夢を拾い集め、現とつなぎ合わせる…そんな物語です。

 今回描かれるのは、信玄の娘・松姫と、彼女と奇しき因縁で結ばれた奇妙丸なる若者――奇妙丸の「正体」については、歴史に詳しい方であれば先刻ご承知でありましょうが――の運命。
 確かに歴史上存在した二人の、歴史上に残るエピソードを、「夢」というオブラートでくるむことにより、無味乾燥な事実の羅列が、切なくも哀しい悲恋物語として再構築される――こう書くと当たり前ではありますが、時間と空間を超越する「夢」を媒介として、二人の人生の断片を巧みにつなぎ合わせてみせる様は、なかなかによくできたものかと思います。

 そして結末…タイトルに掲げられた「紅い星」が何を指すのか、その意味に気づいた時には、まさしく甘く、はかない想いが胸に湧きます。


 あえて本作の欠点を言えば、奇妙丸の両親が少々目立ちすぎという印象はあるのですが、これはまあ、存在自体が巨大な二人ゆえ、いたしかたない、というところでしょう。二人の描写――特に母親の――自体はなかなか印象的かつ個性的で、私は嫌いではありません。

 さて、朧とゆかり、二人の夢視師は、彼ら自身が夢であるかのように、様々な時代、様々な場所に顔を出す様子。第二弾は時代を遡って源平合戦の頃とのことですが、こちらも彼らの後を追って、次の夢物語に触れてみたいと思います。


「夢視師と紅い星」(藤原眞莉 集英社コバルト文庫) Amazon
夢視師と紅い星―花いのちの詩 (コバルト文庫)

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