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2008.12.26

「主水之助七番勝負 徳川風雲録外伝」 三番勝負「邪剣 亀之助」

 既に全七話の放映は終了しましたが、一話だけ私がポカして見ることが出来なかった第三話。その第三話を、あるお方のご厚意で見ることができました。
 今頃で恐縮ですが、これがかなり面白い回だったので、ここに紹介する次第です。

 さて第三話は原典の「剣鬼」シリーズ中、「助太刀佐平次」をベースとした内容ですが、原典とは違い、「剣鬼」を原作で主人公たちの仇討ちの対象である林亀之助としたのがちょっと面白いところではあります。

 原典は、武辺の意地から父を討った林亀之助を追うこととなった江馬右馬丞と、その供の佐兵次を描いた物語。題名にあるように、主に佐平次視点からの物語ではあるのですが、それだけではなく、仇討ちに否定的な右馬丞の立場も等しく描くことにより、運命の皮肉さ残酷さを浮かび上がらせた、印象的な作品です。
 今回のドラマでは、時代背景は変わっているものの、原作の骨格をほぼそのまま使いつつ、そこに本作のレギュラーである主水之助、そして仇討ちの旅を続ける村井姉弟を絡めることにより、より仇討ちというものの虚しさと、武士として生きることの難しさを強調しているように思えます。

 血気盛んな青年武士である村井信太郎(これもまた、柴錬作品にはお馴染みの人物造形であります)は、仇討ちに、いや武士としての生に否定的な右馬丞を軽蔑し、一方で主水之助は彼の生き方に理解を示し、新たな生を応援しようとするのですが、実はこの三者に共通するのは、いずれも仇持ちという点(性格には主水之助の場合はいわゆる仇討ちとは違いますが、倒すべき宿敵のために全てを擲って諸国を放浪する運命という点では共通でしょう)。

 原典では、右馬丞と佐兵次の対比で描かれたこの立場の違いが、このドラマでは、右馬丞を挟んだ信太郎と主水之助の対比という形で――そして時代劇的には異端な右馬丞のスタンスを、主水之助によってフォローすることにより――より明確化されているように感じられます(そして、自分は宿敵を追うことに人生を費やしながら、いやそれだからこそ右馬丞に人間らしい生き方を勧める主水之助の姿が実に良いのです)。

 また、原典では兵法の達人である佐平次を、ドラマでは右馬丞とどっこいの腕前とすることで、原典の右馬丞と佐兵次の対比、そして二人の主従愛も残すことに成功しているように思うのです。

 その一方で非常に残念なのは、彼らと対峙する林亀之助が、何だか時代設定間違えたのではないかと思うくらいトンチキな言動のキャラクターなっていることで――山口馬木也氏の迫力でギリギリ救われている感はありますが、ここで急にフツーの時代劇になってしまったのは、実に残念であります。


 とはいえ、原典の料理の仕方といい、本作の本筋との絡め方といい、実に興味深かった今回。最終話まで見て、ある程度本作を把握した後の、ある意味落ち着いた目で見たから、ということもあるかもしれませんが、なかなかレベルの高いエピソードであったように感じます。

 今回のエピソードを見る機会を与えて下さったK先生には、この場を借りて心より御礼申し上げる次第です。


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