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2009.01.26

「軒猿」第1巻 道具を超えて…?

 ただ一人越後の山中で生き延びてきた少年・旭。落ち武者狩りの最中に、偶然、長尾景虎の配下の忍び衆・軒猿と出会った彼は、かつて己を救ってくれた景虎の力となるため、軒猿入りを志願する。神保長職を相手の初陣で、己の持つ特異な力「耳疾し」を活かそうとする旭だが…

 戦国大名がそれぞれ独自の忍者集団を抱えていたことはよく知られた話ですが、忍者好きの方であれば、本作のタイトルともなっている「軒猿」が、その中でも長尾景虎(上杉謙信)の下で活躍したと言われる一団であることも、よくご存じでしょう。

 その史実(?)に基づいた本作は、長尾景虎に憧れ、軒猿入りを志願する少年を主人公とした物語。
 常人の域を遙かに超えた鋭敏な聴覚「耳疾し」を持つ主人公・旭は、その異常の力を認め、自分を自分として認めてくれた長尾景虎の恩に報いようと努力するのですが、そこで出会ったのは理想と現実という言葉では生ぬるい、凄惨な戦場の有り様で…というのがこの第一巻の展開です。

 ただでさえ綺麗事ではすまない戦国時代の合戦。その更に陰働きである忍びの仕事は、当然、陰惨極まりない、非人間的なもの。事実、作中で軒猿の先輩たちは、幾度となく自分たちを「道具」「鬼」と呼ぶのですが、しかしそれは旭にとっては何とも皮肉なことではあります。
 まだ作中ではわずかに触れられただけですが、かつて、その耳疾しの力がために周囲から道具のように利用され、人間扱いされずに虐待されてきた過去を持つ旭。その境遇から自分を救い出してくれた(と信じる)景虎のために、彼が決心した軒猿になるということが、道具に、人間以外のものになるということを意味するというのですから…

 まったく正直なことを言えば、この第一巻での旭の行動は、あまりにも自分の立場に対する自覚がなさすぎて、イライラとすらさせられるものなのですが、しかし、このような旭の立場を考えれば――そして健全な精神を持つ少年であることを考えれば――彼の行動にも頷けるものもあるのがまた事実。
 彼が耳疾しの力を振るうということが、そして彼が軒猿となるということが、彼を変えていくのか、はたまた周囲を変えていくのか。景虎がかつて旭に語った言葉、「存分に強くなれ」というその言葉の意味を、より良き形で我々読者に示してくれることに期待します。


 にしても、入れ墨ガチムチ六尺褌の景虎とは、斬新というか何というか…


「軒猿」第1巻(薮口黒子 集英社ヤングジャンプコミックス) Amazon

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