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2009.01.21

「真田昌幸 家康狩り」第3巻 真田昌幸誕生

 徳川家康こと信濃の醜鳥を、三方ヶ原であと一歩まで追い詰めながらも、服部半蔵の妨害で逃した真田昌幸。九死に一生を得た家康は、次々と武田家に謀略を仕掛け、ついに武田家に滅亡の日が訪れる。狭量な武田勝頼に見切りをつけた昌幸は、武田軍学の粋「表裏比興」を体現するため、新たな一歩を踏み出す。

 道みちの者を親方たる真田家を束ねる真田昌幸と、徳川家康に成り代わった下忍・信濃の醜鳥の対決を描く「真田昌幸 家康狩り」の第三巻にしてひとまずの最終巻が発売されました。

 今回描かれるのは、昌幸が家康をあと一歩まで追い詰めた三方ヶ原の戦に始まり、大信玄の死から長篠の戦を経た武田家滅亡、そして本能寺の変まで、戦国の巨大な時代の動きの中で、室町武士道を貫く昌幸の姿。
 室町武士道のなんたるかについては前巻でも語られましたが、それは簡単に言ってしまえば、単なる上位者への無批判な隷属ではなく、己の力を評価し尊敬できる主君に対し、主体的に己の力を発揮して仕える武士の道、といったところでしょうか。
 もちろんそれは、単なる自分勝手な個人主義などではなく、己を力を生かすことが他者をも生かすことに繋がる人間の道。それこそが、武田軍学の粋であり、昌幸の奉じる「表裏比興」の精神であります。

 今回は、最終巻ではありますが、室町武士道の体現者としての真田昌幸誕生篇とでもいうべき内容。幼少時から仕えてきた武田信玄が亡くなり、そして武田家が滅び、依るべきものを失った昌幸が、いかにして戦国の世に地歩を固めるか、その第一歩を踏み出すことになります。

 正直なところ、それ自体ドラマチックな史実を語るだけでも、些か駆け足となってしまった感はあり、伝奇性がやや薄めなのは残念ではありますが、その分はキャラの面白さでカバーといったところでしょうか。
 昌幸と家康は言うに及ばず、まさに魔界の忍者と言うべき存在感を見せる服部半蔵、配下の負の感情を煽り狂わせていくことを楽しむ織田信長、己の劣等感を押し隠し跳梁する羽柴秀吉――いずれも、本作ならではこの作者ならではの味付けであります。
(が、その中で最もユニークな信長がここで退場というのがいかにも惜しい…)


 さて、真田昌幸の名を冠する物語はここで完結ですが、この先の物語は、その子・真田幸村を中心に据えて展開する様子。
 言うまでもなく、史実では家康が幕府を開き、昌幸・幸村は敗者の側となったわけですが、これは正史の話。
 果たしてその裏を掻いて、如何に真田が家康を狩っていくのか――正史への反撃に期待します。


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