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2009.01.31

「戦国戦術戦記LOBOS」第4巻 凶器から人間へ

 「戦国戦術戦記LOBOS」もいよいよ佳境。この第四巻では、これまで謎に包まれていた市蔵の過去のエピソード、伊賀との因縁や愛銃の由来が描かれます。

 かつて、伊賀最強の日隠衆に属していた市蔵。任務中に深手を負って倒れた彼を救ったのは、喜兵衛という猟師でありました。身よりのない子供たちを引き取って育てていた喜兵衛は、市蔵に対しても無償の愛を注ぎ、その優しさは頑なな市蔵の心をもやがて開いていくのですが…

 人間凶器として育てられた存在が、お人好しとも言える人間の良心・人情に触れ、人間らしい感情を芽生えさせるというのは、古今東西のエンターテイメントに見られるシチュエーションであり、その意味ではこの過去篇も、ベタな展開であるとは言えます。
 しかしながら、荒々しい中にも細やかな心理の動きを感じさせる描線と、一つ一つのエピソードの積み重ねの巧みさが、市蔵の人間性の芽生えを、実に感動的なものとして描き出しているのには感心させられます。

 さらに、そのエモーショナルな盛り上がりは、それに続く悲劇の中で描かれる、市蔵と喜兵衛の間の果たせなかった約束と、果たさなければならない約束を鮮明に浮かび上、市蔵の悲しみと怒りを、ダイレクトに我々読者の胸に突き刺してきます。
 喜びだけでなく、悲しみも怒りも人間の、人間の心の証――そんな単純で、切ない事実を、この過去篇は痛いほどに伝えてくるのです。


 さて、その過去篇は第四巻の前半で描かれ、後半は再び現在(市蔵にとっての)に舞台を移します。「狼」の採用試験を受けることとなった少女・たまとの触れあい、気難しい歴戦の老兵と組んでの救出ミッションという二本の単発エピソードを挟んで――この二本、どちらもひねりの効いたエピソードとなっていて、本作の懐の広さというものを感じさせられます。特に前者は、色々と無理のある設定ではあるのですが、たまの正体には「なるほど!」と大いに唸らされた次第――物語は市蔵の復讐行の締めくくりへ。

 天正伊賀の乱を背景に、いよいよ怨敵・伊賀との正面対決を決意した市蔵。その対決は、必然ではあるのですが、しかし問題は、そのために市蔵が「狼」の離脱を選んだこと。
 市蔵の人間性は、喜兵衛だけではなく、「狼」での生活が育んだものでもあるはず。その「狼」に背を向けたということは、再び孤独な人間凶器としての市蔵に戻るということなのか――

 そうではない、そうはさせないという力強い答えが、物語から返ってくることを期待しますが…


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