「南総里見白珠伝 紅無威おとめ組」 理屈抜きの八犬伝異聞
桔梗の友人で稲葉正明の娘・礼姫が何者かに拐かされた。折しも稲葉家で不穏な動きがあることを知った桔梗は、小蝶・萩乃、そして戯作者希望の滝沢左七郎とともに稲葉家の領国・館山に向かう。そこで紅無威おとめ組を待っていたのは、里見家にまつわる八つの白珠にまつわる大騒動だった!
お正月は理屈抜きの娯楽作品を、というわけで、カラフルでキッチュな装丁も楽しい「紅無威おとめ組」の第二弾。これがまた、なんとなんと、かの「南総里見八犬伝」異聞とも言うべき大冒険活劇であります。
「南総里見八犬伝」といえば、時代伝奇小説の大先輩ですが、その成立には実は滝沢左七郎、後の曲亭馬琴が巻き込まれたある大事件があった、というまことに米村作品らしい人を食った趣向です。
ある作品の成立の陰には、実はこんな秘密が…というのは、古今東西で見られるパターンですが、本作では、プレ八犬伝とも言うべき史実(?)と、左七郎自身が経験した事件をオーバーラップさせるという、ある意味メタな手法で描かれる内容は、八犬伝ファンであればニヤリとくる(か、真っ赤になって怒り出す)ものばかりです。
しかしこうした趣向に物語の本筋が負けてしまっては意味がないのですが、その点は、個性の固まりのような紅無威おとめ組にとっては心配御無用。
実は松平定信の妹の女剣士・桔梗に陽気なかるわざの達人・小蝶、発明と無駄なお色気担当の萩乃――時代小説の世界にはよくいるようでいて、やっぱりそうはいない三人娘が、伝説も宿命もあるものかはと暴れ回る様は、理屈抜きの華やかさと楽しさがあります。
そのフリーダムぶりは、クライマックスで頂点に達し、もはや時代伝奇というよりファンタジーの地平へ。元ネタをも遙かに抜き去っての飛ばしっぷりは、好き嫌いは分かれるだろうとは思いますが、私的にはもちろんOK。時代小説では久々に真っ正面からの妖術合戦を楽しむことができました。
ただ唯一残念だったのは、クライマックスで三人娘の名乗りが見れなかった――というより約一名ロクに出番がなかった――ことで、ここはやはり様式美として大事にして欲しかったなあとは思うのですが。
それはさておき今回のお話もめでたく大団円――ではあるのですが、その一方でおとめ組の存続にも関わりそうな展開が進行中。
ここで「続きはまたのお楽しみ」というのは実にずるい、続きが気になりすぎる! と、作者の手にまんまとはまってしまった次第です。
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