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2009.02.25

「絵巻水滸伝」 第七十六回「攻旗」と第七十七回「業火」前編

 諸般の事情で先月の感想はお休みしましたが、「絵巻水滸伝」は毎月更新。ということで今回は第七十六回「攻旗」と第七十七回「業火」前編の二回分の感想をまとめて。

 天才参謀・聞煥章を連れた童貫の猛攻に曝されることとなった梁山泊、童貫軍とは互角の戦いを繰り広げたものの、そこにいずれ劣らぬ古強者揃いの十節度使の攻撃が加わり、思わぬ籠城を強いられることに。戦場では無敵の豪傑たちでも、戦場に出ることを封じられては形無し、聞煥章の搦め手の攻めに苦しめられる梁山泊の運命は…

 というところまでが前々回のお話でしたが、「攻旗」では、ついに梁山泊軍が反転して総攻撃を開始(前々回のラストでスポットが当たった魏定国の裏切り疑惑に、あまり明確な答がでなかったのが逆に面白い)、童貫をあと一歩というところまで追い詰めます。それと並行して梁山泊の豪傑たちと十節度使の死闘が繰り広げられ、前々回の鬱憤を一気に晴らすような内容にこちらの溜飲も下がる思いでした。
 これまでの官軍との戦いでは、常に梁山泊が中心にあったのに対し、今回の梁山泊は、そこから討って出ての大攻勢。再び百八星の封印が解かれた…というのはいささか大袈裟かもしれませんが、それくらいの勢いがあったかと思います。思いしたが…

 しかし、それすらも官軍の手の内だった、というのが今回更新の「業火」前編。
 各所に分かれて攻勢に転じた梁山泊軍ですが、守備が手薄となったところへの攻撃で塞はダメージを受け、それどころか塞に戻る手段までも失うことに。
 一方、童貫を追ったために総大将たる宋江たちは孤立したところに一気に伏兵の攻撃を受け、救援に向かう部隊も節度使たちに釘付け…さらに高キュウ率いる大水軍が迫る!

 と、ここまでのピンチは、第一部終盤の関勝戦以来ではないかと思いますが、面白いのは原典との対比。
 原典のこの辺りのくだりでは、梁山泊軍はほとんど無敵、官軍をものともせず連戦連勝で、童貫・高キュウを散々に打ち破ってしまうのですが、本作ではご覧の通りの大苦戦であります。

 元々原典で百八星集結以降の梁山泊は、ほとんど無敵状態か、そうでなければ理不尽に人死にが出るという両極端で、それが後半の面白味を奪っていたというのは否めません。
 本作でのこの時点での梁山泊の大苦戦は、この後に待ち受ける招安という一大イベントに説得力を与える――原作では完全に勝っていたのに宋江何やってんだ、という有様でしたから――と同時に、大きく見れば、こうした不満点の解消も考えてのことなのでしょう。

 しかしあまりハラハラさせられるのも辛いお話。次回は中編、ということで、あと二回は勝利の鐘は響かず、ということでしょうか…


公式サイト
 キノトロープ/絵巻水滸伝


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