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2009.03.26

「箱館妖人無頼帖 ヒメガミ」第5巻 そして堂々の大団円

 「箱館妖人無頼帖 ヒメガミ」の最終巻が、ついに発売されました。
 「マガジンZ」誌の休刊により、連載時には描かれなかった最終話を描き下ろしての完結ですが、そんなイレギュラーな形で描かれたとは思えないほど、「堂々の」と評すべき見事な完結であります。

 黒後家楼での死闘を経て、一時の平和を取り戻したかに見えた彪とヒメカたちの前に、ヒメガミの力を奪い、我がものとする謎の敵が出現。戦う力を奪われた上、ヒメカを奪われた彪と仲間たちは、絶望的な最後の戦いに臨むことに――
 と、ヒメガミの力が敵に奪われるだけでなく、それが敵に使われてしまうという、バトルものとして非常に燃えるシチュエーションが展開されるこの最終巻。しかし単に燃えるだけでなく、その戦いの中で、封印の正体、ヒメガミと妖人の関係、箱館に妖人が出現した理由など、物語の核心に迫る謎が語られていくのが心憎い展開(少し駆け足気味なのは、まあ仕方ありますまい)。

 しかし、それ以上の意味を持つのは、彪が自分自身の意志でヒメガミに戦いを挑むことにより、彼女のヒメガミ超えが、そして何よりも彼女の成長が描かれることでしょう。

 振り返ってみれば、これまで感想を書くたびに、彪を指して未熟未熟と言い続けて来た気がします。
 しかしラストに至って、誰かに言われたからでも、それしか道がないからでもなく、己自身の確たる意志で戦いに挑む彼女の姿は、その未熟さを見事に――これまでの展開は皆、この時のためであったか! とすら思わされるほど――乗り越えた姿であり、胸を熱くさせられます。

 これまで、自らが望むにせよ望まぬにせよヒメカに支えられていた彪が、そのヒメカを救うため、己自身の命を投げ出す覚悟で立ち上がる(そしてそれが、絶望に打ちひしがれた仲間たちの心にも火を付ける!)。これ以上に彼女の成長を示すものがありましょうか。

 結末は、これはある意味様式美と言えるかもしれませんが、しかしここまで描かれれば、語られるべきものはほとんど全て語られたというべきであり、堂々の大団円、というほかありません。


 個人的な趣味から言えばいささかサービス過剰とも思えるほど婦女子の裸が描かれながら、しかし物語全体からは、正しく男燃え・男泣きの魂を感じる本作は――もちろんその伝奇テイストも含めて――まさに環望の面目躍如たるものがあったと言えるでしょう。
 最後まで読んできて良かった――そう言い切ることができる作品です。


 しかし土方の前の封印の持ち主が描かれなかったのは残念…もんのスゴい設定だったのに。


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箱館妖人無頼帖ヒメガミ 5 (5) (マガジンZコミックス)


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