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2009.03.30

「丑三つの月 あやかし草紙」 今回は趣向を変えて

 仕事帰りの丑三つ時、幇間の藤八は、とある神社で丑の刻参り姿の二人組に襲われ、からくも逃げ延びる。翌日、その神社で無惨に樹に打ち付けられた男の死体が発見され、藤八の周囲にも何者かの魔の手が延びる。

 柳橋の幇間・藤八を主人公とした竹河聖先生の幕末もの第四作であります。
 毎回毎回奇怪な事件に巻き込まれる藤八ですが、今回の事件は彼自身が直接的に命の危険に巻き込まれるもの。何とも異常な丑の刻参りを目撃してしまったがために、一向に全貌の見えない事件に藤八は巻き込まれ、幾度も暗殺の危機に曝されることとなります。

 ここで今までのシリーズの読者の方であれば、おや、と思われるかもしれませんが、今回はこれまでの作品に比べると、かなりアクションの度合いが強い作品。登場人物はお馴染みの顔ぶれなのですが、この点で、これまでのシリーズとはかなり印象が異なります。
 実は幇間として暮らす藤八の前身は、御庭番。引退して久しいとはいえ、並みの幇間では及びもつかぬ戦闘力を持っているわけで、その藤八がいかにして暗殺の魔手を潜り抜け、謎を解き明かすか、というのが本作の趣向であるかと思います。

 この辺りの藤八の苦闘ぶりはなかなかに面白いですし、ある意味藤八の後見役とも言える、同じく元御庭番のご隠居(時代ものファンならお馴染みの人物の縁者で作者の先祖(!))の存在感も良いのですが、しかしその一方で少々残念なのは、ホラー分がかなり薄れていること。
 元々、怪異をはっきりと、一つ一つ理屈立てて描くというシリーズではありませんが、それでもシリーズの味と言うべきものだったために少々もったいない気もいたします。
(本作にも怪異のようなものは現れるのですが、その扱いが…)


 しかしながら、題材・趣向が変わったとしても、物語全体を包むムードは変わらないのは、これはさすがというべきでしょう。
 考えてみると毎回版元が変わっているこのシリーズ。今回の版元に合わせた方向修正と言えなくもないかもしれません。

 まことに余計なお世話ではありますが、そろそろ腰を落ち着けていただきたいという気持ちも、ファンとしてはありますので…


「丑三つの月 あやかし草紙」(竹河聖 角川春樹事務所ハルキ文庫) Amazon
丑三つの月―あやかし草紙 (時代小説文庫)


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