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2009.04.22

「恋する新選組」第1巻 女の武士道の行く先は?

 赤子の頃に多摩の宮川家に拾われた少女・空は、天然理心流の近藤家に養子に入り、勇と名を変えた兄を追って、江戸に出る。試衛館に転がり込んだ空は、沖田総司をはじめ、道場に集う居候たちとたちまち仲良くなるが、幕末のうねりは、彼女や試衛館の仲間たちを巻き込もうとしていた。

 先月創刊された角川つばさ文庫の第二弾にラインナップされている本作は、近藤勇の架空(だよね?)の妹を主人公とした、新選組異聞。
 作者は、長編時代ファンタジー「忍剣花百姫伝」の越水利江子先生だけあって、大いに期待していたところです。

 さて、一見、本作は極めてオーソドックスな新選組ものという印象があります。
 豪快で器の大きな近藤、クールな美男子の土方、凛々しい好青年の沖田、美形だが豪放無頼の原田、インテリで冷静な山南(ちなみに山南を「さんなん」と読ませているのが、作者の拘りが感じられて興味深いところ)、豪傑肌の永倉、天然気味の美青年の藤堂…
 いずれも、我々が新選組――というより試衛館メンバー――に抱くイメージに基本的に沿ったキャラクター造形となっています。

 また、本作の最大の特徴である、主人公は女の子という設定も、男性集団に女の子が紛れ込むというシチュエーション自体は、さして珍しいものではない――新選組ものでも皆無ではない――かと思います。

 …が、そんないささか意地悪な見方をしてもなお、本作は十分以上に楽しいのです。
 定番の新選組描写には、それだけこちらの期待を裏切らない安心感と楽しさ(よぉ、やっとるなあ! と言いたくなるような…)が満ちていますし、しかもそれを女の子の目線から描くことによるちょっとしたひねりの入り方もまた心地が良いもの。
 簡潔ながら実に当を得たキャラクター描写となっているのは、これは作者の愛情ゆえ、という印象もあります。
(その一方で沖田を、単純な美青年ではなく、顔立ちは普通ながら所作や心の有り様が爽やかな好青年として描いているのに感心いたしました)

 尖った部分はないものの、王道を行く内容となっているのは、もしかすると本書で初めて新選組に触れるかもしれない読者層を考えれば、当を得たものと思えるのです。


 そしてまた、大人の視点から見ると、空が行くべき道として「女の武士道」という概念が提示されているのが目を引きます。
 試衛館組をはじめとする男性キャラクターたちの掲げる武士像・世相に対する主義主張が、単純かつ直情的――これは作品として単純化しているというよりは、当時の現実の一側面だと感じます――なのに比して、おそらくは空の見る幕末は、彼らの目に映るものとは別のものであるはず。そしてそれは彼女のこれからの生き方にも、大きな影響を与えることでしょう。

 それがこの第一巻で登場した「女の武士道」とイコールの概念であるかはわかりませんが、しかしこちらの展開にも、これから注目していきたいところです。


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