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2009.04.25

「この島にて」 恐るべき進化の果てに

 神隠しにあった息子を求めて、朋輩とともに「この島」なる孤島に渡った香西四郎。つい先日暗殺された妖管領・細川政元が生み出したというその島に上陸した彼らを、奇怪に変容した生物たちが襲う。果たしてこの島で行われていた術とは…

 奇々怪々なお題の多い「異形コレクション」にしては珍しくストレートな(?)テーマ「進化論」に収録された一編であります。
 進化論と室町伝奇を結びつけてみせた本作の作者は、言うまでもなく朝松健先生。今回も、アクロバティックでありながら、骨太な伝奇世界が展開されています。

 本作の主人公は、「妖管領」細川政元を暗殺した香西元長(実在の人物)の従兄弟・香西四郎。
 神隠しに遭った息子が、実は政元に拐かされ、「この島」なる孤島に捕らわれていることを知った四郎が、島で目撃した地獄絵図が、元長による政元暗殺の場面と平行して描かれます。

 細川政元と言えば、その強大な政治力・軍事力で応仁の乱後の幕府を牛耳った人物ですが、その政元が「妖管領」なる異名を持つのは、実に数々の邪法を行い、奇怪な挿話を残しているが故。
 しかもそれが立川流とくれば、これはまさに朝松室町伝奇のために生まれたような人物であります。

 さて、その妖管領が生み出した島で待つのは、本来の姿からかけ離れた奇怪な姿を持つ生き物たち。
 「孤島もの」とでもいうべき物語様式に忠実に、一人、また一人と同行者が犠牲となっていく中で、四郎がたどり着いたあまりにも無惨な真実――それこそが、本作における「進化論」の正体であります。

 物語の核心でありますゆえ、はっきりとは書けませんが、妖術としては非常にメジャーなあの術法を題材としつつ、それを「進化論」として捉えてみせた視点の妙には、ただただ唸るほかない…というのが正直な気分。
 なるほど、共に○○○○という共通項がありますが――いやはや驚きました。

 物語構成としてはシンプルな部類に入りますが、「この」強烈なワンアイディアでKOされました。いつもながら見事な作品です。


「この島にて」(朝松健 光文社文庫「異形コレクション 進化論」所収) Amazon
進化論  異形コレクション (光文社文庫)

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